2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21530069
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山本 哲生 Hokkaido University, 大学院・法学研究科, 教授 (80230572)
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Keywords | 民事法学 |
Research Abstract |
今年度はまず説明義務の理論的基礎の到達点を把握することに努めた。ただし、行動経済学に基づいた研究が発表されるなど、説明義務の基礎に関する研究もいまだに発展途上というところもあり、今後も研究の進展をフォローする必要がある。 今年度の最も大きな成果は助言義務に関する研究である。助言義務については、自己決定権からは助言義務は導かれず、業者との高度な信頼関係(信認関係)に基づいて初めて認められるとするのが有力な学説である。この説は自己決定権が実質的に機能するためには説明義務を認めれば足りると理解している。しかし、顧客が自己のニーズを把握すること自体が困難であり、業者の情報提供のあり方によって顧客のニーズ把握がゆがめられてしまうおそれがあるような場合には、説明義務だけでは自己決定権が機能することを確保することはできない。このような場合には、顧客のニーズ把握をゆがめないようにするという意味で、単なる説明義務を超える義務を認めるべきであると考えられる。もっとも、これは一般論でありどのような取引において、このような意味での助言義務を認めるべきかについて、業者側に過度の負担をかけることにならないかという点を含めて、取引ごとに検討する必要がある。 また、助言義務を認めたとしても、義務違反により損害賠償を認めることを考えると、どのような場合に義務違反を認めるかという点では、非常に困難な問題が残る。顧客のニーズをゆがめたどうかの認定は顧客のニーズがそもそも明確ではないところがあるので、非常に困難である。このように立証責任も含めてさらに検討する必要がある。
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Research Products
(9 results)