2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21530069
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山本 哲生 北海道大学, 大学院・法学研究科, 教授 (80230572)
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Keywords | 民事法学 |
Research Abstract |
金融商品における説明義務と、たとえば、保障型保険における説明義務につき、前者では、相手方の知見に応じた説明が必要であるとされるが、後者では特に説明事項については、一般的な顧客の定型的なニーズに合わせて説明すればよいとされることが多い。この違いは、前者と後者とで、説明が必要とされる事項の幅に違いがあり、このことが業者側のコストに結びついているために生じているものと考えられる。すなわち、金融商品における説明義務で問題とされるのは主にリスクの程度である。理論的には、リスク以外の商品内容についての説明義務がないわけではないが、実際に問題になるのは、主にリスクの程度に関する事項である。これに対して、保障型保険についての説明義務では、免責事由、保険契約者の義務、義務違反の効果など種々のことが説明すべき事項として立ち現れる。かつ、このような契約内容は非常に細かい点にまで及んでいるので、すべてを詳細に説明することは現実には困難であり、説明事項を絞ることになる。本来顧客が興味をもつ事項は顧客それぞれのニーズによって異なるのであるが、業者側が積極的に調査して、顧客のニーズにあった事項を説明するのでは非常にコストがかかる。そこで、定型的なニーズに合わせて説明すればよいという考え方が正当化される。金融商品では説明事項は現実には最初から定型化されているともいえる。このようにこの問題は、説明義務の内容に業者のコストが無意識に反映されていたものである。
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Research Products
(8 results)