2012 Fiscal Year Annual Research Report
協同組合法理論における同一性の原則の相対化に関する研究:非利用組合員を中心にして
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21530070
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Research Institution | Otaru University of Commerce |
Principal Investigator |
多木 誠一郎 小樽商科大学, 商学部, 教授 (50324364)
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Project Period (FY) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 民事法学 / 協同組合 / 投資組合員 / 非利用組合員 / 同一性の原則 |
Research Abstract |
1.ドイツ協同組合法に関する研究 昨年度までの研究では、伝統的な協同組合法理論を形作る同一性の原則との整合性について説得的な説明は十分にはできないにもかかわらず、他の代替的資本調達手段にはない投資組合員(非利用組合員)の利点に鑑みて、投資組合員が導入されたのではないかという考え方に辿り着いた。これに引き続き本年度は、ドイツで昨年後半に公刊された最新の研究の成果を踏まえて、上記考え方を再度吟味した。その結果以下のような点が明らかになった。協同組合法理論との整合性については、やはり説得的な説明はなされていない。理論的な許容性よりも実務上の必要性にいわば妥協してまで導入された投資組合員の使い勝手が悪い。より端的には投資組合員たる地位に魅力がなく、投資家を引きつけるのは難しいことである。そのためか実際に投資組合員を導入する事例は多くないという。その原因は、組合が生み出した成果を利用組合員と投資組合員との間で分配する際に投資家が期待するほどの分配を受けることが保障されない点、投資組合員が投資資金を回収する際に機動性を欠く点、議決権は付与されているものの投資組合員の意思が反映されにくい点、協同組合では組合員数が制限されていないため、組合員持分の「水割り」が生じる点に求めることができる。 2.韓国協同組合法に関する研究 わが協同組合法と最も類似している韓国協同組合法について、同一性の原則と関連する員外取引規制を取り上げて考察した。既存協同組合諸法の一つである農業協同組合法ではわが法と比べて、同一性の原則はかなり緩やかである。しかし平成24年11月に関連大統領令が制定された協同組合基本法では、員外取引ができる場合が限定列挙され、同一性の原則に回帰している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
欧州とりわけドイツにおける投資組合員(非利用組合員)に係る論点については、ほぼ一通り吟味して理解できたからである。具体的には①なぜ投資組合員が導入されたのか、②導入された投資組合員の制度設計はどのようなものか、③伝統的協同組合法理論を形作る同一性の原則と平仄合わせはできるのか、④さらに一歩踏み込んで、組合員助成と平仄合わせができるのか、⑤実際界での利用状況はどのようになっており、何故そのような状況であるのかといった点である。
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Strategy for Future Research Activity |
1.ドイツ協同組合法に関する研究 次年度は、今年度に購読できなかった投資組合員関連文献の研究を行い、理解を深める。研究遂行に際してはとりわけ、投資家にとって魅力がないという、投資組合員を導入する際の足枷となっている点を改善するには、どのような制度設計が望まれるのか、その設計は現行法の枠内で可能であるのかという点に留意する。 2.わが協同組合法に関する研究 ドイツ協同組合法における法的状況を参考にして同一性の原則を相対化すると、これまでわが協同組合法が知らなかったどのようなタイプの協同組合を設計することができるのか、その可能性を示す。これまで同一性の原則にかなり忠実であるがために生じていた問題点のうち、どのようなものに解決の糸口が与えられ、どのようなものが依然として問題点として残るのかを明らかにする。 3.研究結果の発表 上記1研究によって得られるドイツにおける投資組合員の制度設計・問題点・改善方法について、上記2研究によって得られる新たなタイプの協同組合に係る制度設計のあり方について、日韓の協同組合関連の研究会・学会等で発表する。
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Research Products
(2 results)