2009 Fiscal Year Annual Research Report
人の移動、科学技術の教育・研究と輸出規制―米国の安全保障政策との関連から―
Project/Area Number |
21530153
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
加藤 洋子 Nihon University, 国際関係学部, 教授 (00182345)
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Keywords | 国際関係 / 人の移動 / 輸出規制 / 情報技術革命 / 米国 / 日本 / 科学技術 / 教育 |
Research Abstract |
平成21年度は、みなし輸出規制をめぐる米国の動向を追った。みなし輸出規制とは、技術移転に関わる輸出規制であるが、米国商務省による(みなし輸出)規制強化案(2005年)に端を発した米国での論争は、オバマ政権の登場により、新たな段階に入った。みなし輸出諮問委員会による2007年12月の報告書や、2009年の全米科学アカデミーによる報告書『要塞としての米国を越えて』などは、約50年前に形成された輸出規制政策とヴィザ政策は、今日では米国の国家安全保障や経済安寧を穿ちつつあると批判し、輸出規制システムの全面的再構築を求めた。昨年8月にはオバマ大統領は、国家安全保障会議と国家経済会議に対し、米国の輸出規制全般の見直しを命じている。ここでは「狭い領域に高い障壁を築く」ことが目指されているが、これは、米国の輸出規制の歴史のなかでは、これまでも主張されてきたことであり、目新しいものではない。最近の米国の動向で欠けているのは、みなし輸出規制は、国家の安全保障や経済競争力に関わるものであるが、国家安全保障も経済競争力も、情報技術革命の進展により、全く新たな形をとりつつあること--こういった問題に輸出規制を結び付けた分析が少ないことにあろう。情報技術革命が進展した先にある国家および世界における安全保障の構築のなかに、輸出規制の問題を位置づけることが肝要である。 科学研究費による平成20年度までの報告書を、今年度の研究成果も組み入れた冊子体で準備していたが、冊子体での成果報告書の提出は廃止されたとのことで、今年度は成果物の形にはなっていない。近く論文を発表の予定である。
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