2009 Fiscal Year Annual Research Report
北朝鮮帰国運動と日朝間の不法出入国をめぐる出入国管理の人道措置と治安対策の検証
Project/Area Number |
21530154
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
川島 高峰 Meiji University, 情報コミュニケーション学部, 准教授 (10386427)
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Keywords | 北朝鮮帰還事業 / 在日コリアン / 国際共産主義運動 / シベリア抑留 / 拉致 / 脱北 |
Research Abstract |
北朝鮮帰還事業にいて赤十字国際委員会の史料は1952年から1967年までの資料の九割、約9500ページを入手することができた。日本敗戦後における日朝間の出入国管理については50年代を中心に60年代にかけての法務省・公安調査庁・出入国管理庁・海上保安庁等の資料を収集することができた。これらの資料収集から以下のことが明らかとなってきた。 第一に、北朝鮮「帰国」「運動」の背景として50年代の国際共産主義運動の存在が極めて重要なこと、第二に、北朝鮮「帰還」「事業」の交渉の背景として旧ソ連並びに中華人民共和国における抑留邦人の帰還問題が極めて重要な関係を持つこと、第三に、敗戦後から50年代後半まで在日コリアンの間で広範に行われた日本と朝鮮半島の間における不法出入国はが、外国人登録法と出入国管理法をめぐる在日の法的地位に様々な問題をひきおこし、これが北朝鮮帰還事業と重要な関連を形成していたこと。国際共産主義運動は、不法出入国を通じて日本国内の左派勢力と連携したが、その他方、共産圏からの邦人帰還は人道措置として行われた。国際共産主義運動はこの人道措置を政治的に利用し、朝鮮戦争勃発後、同運動は自由主義陣営に対する「平和攻勢」として展開したが、当時、法的な地位をめぐり同じく人道措置と治安対策の問題を有していた在日コリアンは深くこの国際共産主義運動と関係を持つのである。 このように本研究は、帰還事業のみならず、従来の50年代の捉え方に新たな切り口を提起するものである。 また、帰還事業では約9万3千名が北朝鮮に渡り、現在、日本にはその親族が多数おり、北朝鮮帰国者の安否は現在進行形の切実な人権人道問題である。この関係者の聞き取りを組織する研究ネットワークの基盤として北朝鮮人権問題に関与する諸団体と連携し、アジア人権人道学会を設立(2009年5月)し、同学会会長及び事務局につくこととなった。
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Research Products
(4 results)