2011 Fiscal Year Annual Research Report
北朝鮮帰国運動と日朝間の不法出入国をめぐる出入国管理の人道措置と治安対策の検証
Project/Area Number |
21530154
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
川島 高峰 明治大学, 情報コミュニケーション学部, 准教授 (10386427)
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Keywords | 北朝鮮帰国事業 / 在日コリアン / 国際共産主義運動 / シベリア抑留 / 拉致 / 脱北 |
Research Abstract |
資料収集上、特筆すべき成果は、北朝鮮帰還事業に直接、間接に関連する赤十字国際員会の全資料(約12,000頁)の入手を完了させることができたことである。今一つは、敗戦後の北朝鮮残留邦人の帰還についてこれを包括的に記録してきた赤尾覺氏のヒアリングを通じて同氏の所蔵する資料を収集できたことである。また、占領軍治安情報資料から占領期の日朝間の不法出入国の実情を分析することができた。 研究分析上、特筆すべき成果は、北朝鮮帰還事業の端緒とは在北朝鮮残留邦人の帰国を求め始められた交渉にあったが、国際共産主義運動はこの邦人帰還交渉を逆手にとり、国内左派と連動することで、邦人帰還事業を在日朝鮮人の北朝鮮帰国問題へ変換していった経緯を詳細に解明した点である。また、この対北朝鮮邦人帰還交渉は、当時、東アジア社会主義圏で抑留されていた一連の抑留帰還交渉の展開に位置づけられるべきものであることを確認し点も従来にない知見であった。 もう一つの成果は、在北朝鮮残留邦人の帰還に際し、その多くは公式帰還にはよらない自力脱出となったが、その際、在北朝鮮邦人の中にいたごく少数の共産主義者が、重要な役割を果たしたことを確認することができた。こうした共産主義者たちは戦中・戦前から朝鮮半島にいた邦人であり、汎太平洋労働組合を通じてコミンテルンの影響下にあった。つまり、このような戦前・戦中の外地の邦人共産主義者の存在が邦人抑留帰還に大きな影響力を有していたのである。こうした検証から北朝鮮帰還事業・帰国運動の前史について新たな見取り図を構成することとなった。 北朝鮮帰国者の意思確認手続きについては、そもそも、帰還登録をする段階において集団で登録行為を行う等、帰国意思を個人単位で確認しようとした日赤側の意図に対し、登録を集団単位で実施することで有名無実化する手法をとっていた点など様々な問題点を資料上、確認することができた。
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Research Products
(3 results)