2011 Fiscal Year Annual Research Report
「2013年までの極東ザバイカル地域開発プログラム」と北東アジア国際秩序の研究
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21530157
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
堀内 賢志 早稲田大学, 付置研究所, その他 (80329052)
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Keywords | ロシア / 地域開発 / 国際協力 / エネルギー |
Research Abstract |
平成23年度は、ロシア極東地域開発の進捗状況をフォローすると同時に、中国との国境地域間協力の現状、アジア太平洋地域レベルでのエネルギー協力に関する研究を進めた。 中国との国境地域間協力に関しては、2009年9月に合意された「ロシア極東・東シベリアと中国東北の協力プログラム」を基礎とした開発協力が進められているが、中国側に比べ、ロシア側の進捗にはかなり遅れが見られる。その背景には、このプログラムが金融危機におけるロシアの切迫した状況下で合意されたものであり、ロシア側の政策的方向性と矛盾すると認識されていることなどがある。このテーマについては研究報告「ロシア極東開発と国境地域間関係の強化をめぐる政策動向」で予備的な考察を行ったが、平成24年度に繰り越して実施した現地調査を踏まえた研究成果を現在まとめている。 地域レベルでのエネルギー協力に関しては、地域的なエネルギー協力制度の実効性について考察すると同時に、地域のエネルギー大国として存在を増しつつあるロシアを含んだ形で調和的な協力関係が構築される可能性ついて考察した。地域エネルギー協力制度については、エネルギーをめぐるリスクの共有を主要な原動力として発達してきたものの、リーダーシップの協調において困難があり、現状では初歩的な協力段階にすぎない。そこにおけるロシアは、不安定要因ともなりうるが、地域的なエネルギー関係においてロシアの立場は実際は強いものではなく、安定的な投資環境を求めており、省エネ等の分野においても協力の余地が大きいため、地域諸国の協調、特に日本や中国をはじめとする消費国間の連携等次第ではより制度化された協力関係が構築される可能性がある。これについては論文「東アジアのエネルギー・環境制度」、および、刊行予定の論文「Russia and Energy Cooperation in East Asia」において論じた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
特に平成23年度は、所属機関での業務に予想以上に時間をとられたこと、また家庭におけるやむを得ない事情があり、予定していた現地調査を十分に行うことができず、研究成果の作成・発表も十分にできなかった。実施できた研究出張と国内において入手できた情報に基づいて研究を遂行したが、研究課題に対する十分な考察を行うためには、更なる現地調査と関係者・識者からの意見聴取を行う必要があると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、海外出張の比重を増やし、これまで十分でなかった現地調査による情報収集を強化しつつ、本研究の中心的な研究対象である極東地域開発プログラムにより行われてきた施策の成果とその評価、それがロシアとアジア太平洋諸国の関係に与えた影響の分析、さらにそれらの総合的な考察を通じて、研究のとりまとめを行う。同時に、本研究課題終了後の研究のコンセプト形成も試みていきたい。具体的には次の4点がある。 第一に、「2013年までの極東ザバイカル地域開発プログラム」の枠内で実施されてきた施策がどの程度計画どおり執行されたか、そこでどのような成果もしくは問題が生じたかを検証する。第二に、先の開発プログラムが実施される一方で、「極東発展省」設置などに見られる地域開発体制の整備、「2025年までの極東バイカル地域発展国家プログラム」の策定など、極東地域開発の新たな方向性がすでに打ち出されている。こうした動向を把握することは重要な課題となる。第三に、上記の開発を通じて極東地域の経済社会発展の加速化とアジア太平洋地域経済との統合という当初の目的がいかに達成されたかを検証し、またその今後について考察することが重要な課題となる。第四に、上記の通りロシアの極東地域開発とアジア太平洋地域との関係は新たな展開を見せており、とりわけ、ロシアでは極東開発の推進、中国へのカウンターバランスといった面で日本との協力の必要性をこれまで以上に高めている。そうした観点から、上記の研究を取りまとめつつ、本研究課題終了以降の研究のコンセプトを作り上げていきたい。
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Research Products
(3 results)