2009 Fiscal Year Annual Research Report
ドイツ1920年代半ばのヒルファディングの景気政策と調査及び経済体制論
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21530190
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Research Institution | Kinjo Gakuin University |
Principal Investigator |
河野 裕康 Kinjo Gakuin University, 現代文化学部, 教授 (50161344)
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Keywords | 思想史 / 経済政策 / ヒルファディング / ドイツ社会民主党 / 組織された資本主義 |
Research Abstract |
ドイツの1925年後半から1926年にかけてR.ヒルファディングの経済政策、特に景気政策論は、従来の研究では具体的に立ち入って論じられてこなかった。彼は相対的安定期の当初から早くも景気研究の必要性を説き、経済基盤の再生強化の観点から、政府の過大な公的支出と課税による「準備金政策」を批判した。1925年後半からの不況で彼は、戦時以来の経済の誤誘導や技術的後進性等をその原因と分析し、1926年には新ブルジョア中道政権のようなたんなる減税策でなく、住宅建設など積極的公共事業や金融緩和策、国際的経済政策及び協定、さらに合理化による失業の長期化への対応を説き、結局国会の雇用創出案決議に至った。同時に彼は産業構造の重工業から電機や化学工業への変化を確認し、階層的に組織された経済から民主主義的形態への移行を課題とした。1927年にはブルジョア右派政権誕生による予算の社会的支出削除に抗議し、工業独占の利害擁護の政策に対して「真の福祉国家、真の社会的共和国」を提起した。通商政策では彼は1926年に国際会議で過度の保護主義に反対して、包括的通商条約政策、国連を中心とした国際的関係の再建を訴えた。そして彼はスペイン通商協定ではワイン関税率の抑制を主張し、またスウェーデン通商条約では食糧関税の導入による生計費負担や、飼料関税の引き上げによる小農経営への圧迫を批判し、大地主のためでなく、農業の集約化と加工化に向けて、関税政策よりも生産及び信用政策の必要性を説いた。彼は現行関税率延長の社会民主党動議を提案するも否決され、条約成立となる。なお本年は学会誌からの委嘱により、ヒルファディングも関わったドイツ社会民主党の社会化論の書評も著した。
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Research Products
(1 results)