2011 Fiscal Year Annual Research Report
ドイツ1920年代半ばのヒルファディングの景気政策と調査及び経済体制論
Project/Area Number |
21530190
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Research Institution | Kinjo Gakuin University |
Principal Investigator |
河野 裕康 金城学院大学, 現代文化学部, 教授 (50161344)
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Keywords | 思想史 / 経済政策 / ヒルファディング / ドイツ社会民主党 / 組織された資本主義 |
Research Abstract |
ヒルファディングは1927年5月の社会民主党キール大会の基調報告で、「組織された資本主義」、企業経営の公共性、「経済民主主義」、ファシズムに対する民主主義擁護などを説き、党内左派に抗して、連立政策を含めた柔軟な戦術の決議を提案して採択に導いた。彼の経済体制論は党の基本理念として政治的重要性を持っただけでなく、労働組合や共産党、オーストリア社会民主労働者党など党外からの反響の中で、その新たな独自性も示された。次いで通商政策については、彼はこの間1926年2月と5月の国際経済会議で、保護主義に対して最恵国通商条約の再建、ヨーロッパ関税同盟構想を主張し、その後6月にスウェーデン通商条約で食糧及び飼料関税引き上げ、また1927年4月にはフランス暫定通商協定で小麦粉関税引き上げを批判した。彼は5月のジュネーヴ世界経済会議を国際協力の動きとして歓迎し、同時に規制組織の必要性を訴えた。そして彼は7月の関税変更法では、まさに農民層のためにこそ関税引き上げを見合わせ、工業関税引き下げと共に安価な均衡をめざすよう主張した。さらに彼は9月にリオ国際通商会議で貿易障害の除去を訴え、国際カルテルとトラストを現代経済の特徴的な組織化傾向の産物と見なしつつ、独占阻止のために関税率軽減と公開性を求める決議を提起した。同時に彼は社会民主党内では農業綱領起草委員会委員長として、1月に大土地独占の撤廃と中小農民経営の生活保障、農業生産の促進、農産物販売の規制等を盛り込んだ草案を提案し、5月に論文で農地配分や価格形成の特殊性、農民経営の生産性向上を理論的に基礎づけ、そしてキール党大会で綱領を実現した。このように彼は新たな独自の経済体制論を積極的に展開すると共に、党内外のみならず広く国際的にも経済政策で重要な役割を果たしたことが明らかとなった。
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Research Products
(1 results)