2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21530305
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
岩田 健治 九州大学, 大学院・経済学研究院, 教授 (50261483)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 素香 中央大学, 経済学部, 教授 (20094708)
BANINCOVA Eva 神戸大学, 経済学研究科, 助教 (40581856)
高崎 春華 九州大学, 大学院・経済学研究院, 助教 (40583026)
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Keywords | 金融論 / 金融システム / 金融危機 / EU(欧州連合) / ソブリン問題 / マグレブ諸国 / 自動車産業 / バルト三国 |
Research Abstract |
初年度において研究代表者と研究分担者(田中)は、EU金融危機の全プロセスを、学会報告等を通じて明らかにした。本年度は新たに2名の研究分担者の参加を得て、(1)そうした金融危機に関するより詳細な分析を進める一方、(2)金融危機がEUの実物経済等に及ぼす一連の影響を見極める作業に着手した。(1)に関して、研究代表者は前年度に公刊した翻訳『ドラロジェール報告』の提案が制度化されるプロセスを解明するため、EU金融関連指令案等の収集と分析整理の作業を行い、中間成果を日本証券経済研究所の講演会(2011年1月)にて発表した。また分担者(田中)は編著『世界経済・金融危機とヨーロッパ』刊行し、欧州を襲った危機の全体像を体系的に示した。また分担者(バニンコバ)は、EU金融危機が激しく顕在化したバルト三国に焦点を当てて、外資主導型成長戦略のもとでの外資依存型銀行制度が抱えていた諸問題について解明し、その成果を「日本EU学会年報」で公刊すると同時に、日本金融学会全国大会で報告した。さらにバルト三国の金融監督当局や中央銀行を対象とする聞取り調査を実施し、現地の規制監督体制の問題点に関して新しい知見をもたらした。上記(2)に関して、分担者(田中)は、金融危機が経済危機を介してEU構成国のソブリンリスク問題へと展開するプロセスを分析し、複数の論文・編著により公刊した。また分担者(高崎)は、危機を前後するEU周辺国(マグレブ諸国)の実物経済に着目し、モロッコの自動車産業においてはEU金融危機の影響は比較的軽微で、2000年代に中東欧方面に対して進んできたEUコア諸国(とりわけ独)の生産ネットワークと類似のネットワークが仏・西企業を起点に地中海方面に着実に伸展しつつあることを、モロッコでの詳細な聞き取り調査によって解明し、その成果を日本EU学会全国大会など複数の学会において公表した。以上により、最終年度である平成23年度の成果取り纏めのための基本的な知見をほぼ獲得できたものと考えられる。
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