2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21530305
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
岩田 健治 九州大学, 大学院・経済学研究院, 教授 (50261483)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 素香 中央大学, 経済学部, 教授 (20094708)
BANINCOVA Eva 神戸大学, 経済学研究科, 准教授 (40581856)
高崎 春華 九州大学, 大学院・経済学研究院, 助教 (40583026)
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Keywords | 金融論 / 金融システム / 金融危機 / EU(欧州連合) / ソブリン問題 / マグレブ諸国 / 自動車産業 / バルト三国 |
Research Abstract |
本研究は、米国発の金融危機に直面したEU金融システムが抱える問題点と課題を詳細に考察し、危機脱却後のEU金融・通貨システムの在り方を総合的に展望するものである。 本課題最終年度の2011年度においては、第1に、二つの著書、田中・岩田他(2011)の各章と森井(2012)の第10章(岩田担当)が、市場統合の際の分散型規制監督制度の限界と新たな金融規制監督システムの全体像について明らかにした。また日本証券経済研究所(2012)の第17章(岩田他担当)は、危機後にパラレルバンキングシステムと危機管理の2分野に係るEUの金融法制が急速に整備されつつあることを示した。さらに岩田は金融危機にもかかわらず国際通貨ユーロの機能と役割に大きな変化はないことを示した。 本年度の成果の第2は、今回の危機が域内外の新興市場諸国経済に及ぼす影響について詳細な検討が行われた点にある。バニンコバは信用理論研究学会(招待報告)やInternational Conference on Eurasian Economies等において中東欧・バルト3国における現地監督当局の脆弱性や西欧・北欧当局との間の連携の欠如などを指摘し、そうした問題点を克服するための制度的取組みについて明らかにした。また高崎は国際経済学会全国大会において、EUからの対モロッコ金融FDIについて明らかにする中で、世界金融危機の影響が微弱であった点を示した。 第3に、本研究課題開始後に生じた欧州ソブリン危機に関して、上述の田中・岩田他(2011)等において田中が、森井(2012)において岩田が、財政規律の問題やマクロ・構造両面での域内不均衡問題などについて、EU統合における制度の脆弱性とその強化という脈絡のなかで明らかにした。そうした論点は、2011年6月の田中による証券経済学会大会などでの一連の招待報告や講演によって学会等に発信されている。
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