2011 Fiscal Year Annual Research Report
クロスボーダーM&Aによる自動車産業再編の経済効果
Project/Area Number |
21530308
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
永野 護 名古屋市立大学, 大学院・経済学研究科, 教授 (20508858)
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Keywords | クロスボーダーM&A / 株式取得比率 / マネジメント・システム変化 / 買収企業収益性変化 / ターゲット企業収益性変化 |
Research Abstract |
研究期間最終年度の平成23年度は、平成21~22年度までに得られた実証結果の妥当性について、日本の自動車産業、韓国自動車産業のヒアリング調査を行い、最終成果を米国での国際学会において学術発表を行い、国際学術誌への投稿を実施した。本研究では、昨年度までの実証分析の結果、自動車産業においてクロスボーダーM&A実施後の買収企業、ターゲット企業はともに、統計的に有意に、収益性を改善している傾向が確認されている。そしてその収益性は、国内企業M&A実施後の収益性よりも高いことも、差分の検定結果により明らかにされている。最終成果論文では、こうした実証結果がもたらされた理由の考察として、ヒアリング結果を踏まえ、国際合従連衡による生産要素の再編と再配分、特に新興国部品メーカーへの技術移転、各海外現地での技術開発の進展、の3つの影響がクロスボーダーM&A後の企業業績の改善に貢献していると、結論付けている。世界の自動車産業M&Aは、仏ルノー-日産、米フォード-マツダといった旧来型のクロスボーダーM&Aから、独フォルクスワーゲン-スズキに見られる緩やかな資本提携、中国吉利自動車、インド・タタ自動車等の新興国メーカーによる欧州自動車メーカー買収のようにそのディール・タイプの多様性は年々、拡大を見せている。今後も、自動車産業のクロスボーダーM&Aの頻発と多様性の拡大は進んでゆくことが予想される。本研究の実証結果は、こうした自動車メーカーの国際再編の潮流は、買収企業のみならず、ターゲット企業双方の将来の収益性改善を通じて、互いの国々の経済厚生改善へ、プラスの貢献を果たしている可能性が高いことを示唆している。こうした状況を踏まえると、自動車産業の国際再編は、今後も長期的に増加してゆく可能性が高く、優れた最終製品を開発し続ける自動車メーカー数社へと将来の国際マーケットは収歛へ向かう公算が高いと考えられる。
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Research Products
(5 results)