2010 Fiscal Year Annual Research Report
1970年代における国際石油企業の事業構造の再編成-現代世界石油産業の起点
Project/Area Number |
21530328
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
伊藤 孝 埼玉大学, 経済学部, 教授 (00151514)
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Keywords | 経営史 / 世界石油産業 / 国際石油企業 / エクソンモービル / 油田支配 / サウジ・アラビア / リビア / ヴェネズエラ |
Research Abstract |
平成22年度の「交付申請書」の「研究実施計画」に記載した2点の課題について,得られた研究成果,新たな知見は以下のとおりである。 第1に,エクソン社の関連会社アラムコのサウジ・アラビアでの原油生産能力は,1970年初頭から74年初頭までの4年間に年平均で25%ずつ増加し,特に73年は急速で,年初の650万バレル/日は年末には1000万バレル/日に躍進する。だが,急速な能力の形成,増産体制はここで一旦終息する。生産量は70年代後半においても1000万バレル/日未満にほぼ抑えられた。その理由のひとつは,サウジ・アラビア政府による「事業参加」(1974年には原油生産事業の経営権の60%をサウジ政府が掌握)が,アラムコによる活発な生産増を抑制する要因として作用したからであった。サウジ政府のかかる生産増の抑制策は,将来のための資源の保全と考えられるが,その背景として,原油価格の高騰により,生産量を増加させることなく政府収入の拡大が可能となったことを挙げるべきであろう。なお,こうした状況下ではあるが,エクソン社などアラムコ所有企業が必要とする原油は,サウジ政府所有の原油を買い戻すこと(buy back)によってほぼ確保出来た。これは,エクソン社などとサウジ政府との協調体制が70年代末まで有効であったことを意味する。 第2に,リビアにおける液化天然ガス(Liquefied Natural Gas:LNG)の生産と西ヨーロッパへの輸出事業は,当初,リビア政府との協調関係を維持するための一つの方策として構想され,また原油生産事業の継続につなげる手段としても位置づけられた。だが,輸出はようやく1971年に開始されたにすぎない。しかし,その後も,LNGの輸出価格の引き上げを求めるリビア政府との対立が繰り返されるなど,事業として安定性を維持することは困難であった。結局,1975年には原油生産事業とともに,天然ガスの場合も資産の所有権の50%はリビア政府の手に握られることとなったのである。
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