2011 Fiscal Year Annual Research Report
日露・第一次大戦期における海軍兵器の供給をめぐる国家と企業
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21530342
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Research Institution | Dokkyo University |
Principal Investigator |
奈倉 文二 獨協大学, 経済学部, 教授 (10007825)
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Keywords | 海軍兵器 / 海軍工廠 / 軍器独立 / 軍事関連企業 / 兵器供給 |
Research Abstract |
平成23年度においては、まず第一次大戦期における海軍兵器産業の発展とその問題点について、海軍工廠だけでなく、民間兵器関連産業・企業の発展も含めて考察してきた。それをふまえて、第一次大戦後の軍縮に対する海軍兵器産業の対応について検討し、連携研究者(千田武志広島国際大学教授・鈴木淳東京大学大学院人文科学研究科准教授)とともに、政治経済学・経済史学会におけるパネル・ディスカッションに応募した。パネル全体の報告の論題は「第一次大戦後の日本陸海軍軍縮と兵器関連産業・兵器生産」であり、奈倉は全体の問題提起と「海軍軍縮と兵器生産(民間兵器産業を中心に)」の報告を行った(11.研究発表欄の「学会発表」参照)。 その中で民間兵器関連企業の動向について「軍艦建造における三菱と川崎」との対比を行った上で、新たな実証に基づき主要財閥ごとの特徴を示した。即ち、三菱財閥の重工業部門は従来から長崎造船所中心の製造体制であるが、その造船用鋼材自給計画の積極的な推進との関連で三菱製鉄(兼二補製鉄所)や長崎製鋼所の建設も推進されたこと、長崎兵器製作所は海軍の積極的勧奨により民間唯一の魚雷製造工場として設立されたこと、三井財閥は「軍縮補償」については積極的であったが、日本製鋼所の拡張政策や合理化には極めて消極的だったこと、住友財閥の重工業部門は従来から素材中心で、とくに住友伸銅所(住友伸銅鋼管)の鋼管事業は呉海軍工廠との緊密な連携のもとに行われ、鋼管販売高は艦船用が一貫して過半を占めたこと、大倉財閥は、海軍の積極的支援を受けつつ低燐銑鉄製造を企図し(山陽製鉄所の木炭吹「純銑鉄」製造)、軍縮後は「満州」本渓湖におけるコークス吹低燐銑鉄の製造を成功させたこと、などである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年9月に体調を崩して1週間あまり入院したため、「9.研究実績の概要」に記した通り、学会(政治経済学・経済史学会)におけるパネル・ディスカッションへの応募・報告は行い、第一次大戦期・大戦後の民間兵器関連企業の動向について、新たな実証に基づき主要財閥ごとの特徴を示すことはできたものの、その後の文章化作業(論文としての投稿)が遅延している。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、上記学会パネル報告を基に、精緻化して文章化する。 次いで、海軍中将・山内万寿治(呉工廠建設・日本製鋼所創立に極めて重要な役割を果たした人物)と斎藤實(日露戦時・戦後の海軍次官・大臣)との関係に関する重要史料の紹介・解題を執筆、さらに、第一次大戦期の海軍工廠について、海軍軍令部『大正三四年戦役海軍戦史』、『大正四乃至九年戦役海軍戦史』及び『海軍省公文備考』(防衛研究所所蔵)などの史料分析を行う。また、民間兵器関連企業についても、学会パネル報告の後に新たな実証を行っているので、それらを基に文章化し、海軍工廠との関連についても総括する。 以上の成果にたって、過去4年間の研究成果をまとめる作業を行い、一書を刊行する予定。
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Research Products
(1 results)