2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21530514
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
井上 孝夫 千葉大学, 教育学部, 教授 (10232539)
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Keywords | 海岸 / コモンズ / 不法占用 / 長期占用 / 短期占用 / 自由利用 / リゾート開発 / 中西月華 |
Research Abstract |
標記の研究課題に対して、二年目にあたる今年度は、当初、いくつかの対象地域を選定し、比較検討を行おうとした。だが調査をすすめていく過程で、千葉県の海の家・不法占用問題に関する資料が正規の保存期間を超過し、資料散逸のおそれがあることがわかってきた。そこで対象地域を旧成東町本須賀海岸と九十九里町片貝海岸に限定し、千葉県の保管する資料の公開および複写を請求するとともに、併せて明治時代以降の海岸利用のあり方を調査し、およそ100年間にわたる海岸利用の変化を見極めながら、保全的な利用のあり方を分析することとした。 そこから浮かび上がってきたことは、戦前の海岸利用が地元有志の献身的な働きによって都会からの観光客を招き入れる、という性格が強く、営利性の追求は抑制されていた点である。これは当時の海水浴が保養的な要素を含みもち、長期滞在型だったこととも密接に関連している。それに対して、戦後は高度経済成長期のレジャー志向のもと、地元海岸地域の営利追求によってしか急増する観光客を捌ききれない実態が浮かび上がってきた。その結果、利用優先となり、保全的な側面、あるいは公共的なルールがおざなりにされる結果となった。千葉県内でいえば、その傾向が頂点に達するのがリゾート法に基づくリゾート開発の時期だったわけで、これが県内における海岸不法占用問題の顕在化と連関している。だがこの時期に、ようやく千葉県は従来からの方針の転換を図って、海岸保全へと動き始めるのだった。ここに、海岸の利用と保全に関する弁証法的な関係をみることができるのである。
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Research Products
(1 results)