2011 Fiscal Year Annual Research Report
精神障害者の地域移行支援におけるソーシャルワーク実践に関する統合的実証研究
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21530593
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
清水 由香 (丸山 由香) 大阪市立大学, 大学院・生活科学研究科, 助教 (90336793)
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Keywords | 精神障害者 / ソーシャルワーク / 障害者福祉 / 地域移行 / 事例研究 |
Research Abstract |
(1)平成22年度に実施した精神科ソーシャルワーカーを対象にした質問紙調査の詳細分析、および(2)地域移行を果たした一事例研究とそれを基にした病院職員を対象にした研修企画と効果評価を行った。(1)調査:1265箇所の精神科病院を対象とし、回収された488票を分析した。病院の退院支援の取り組み状況は、「地域移行支援事業」を66.8%%が活用していたが、過去5年で1~5ケースという病院が71.7%であり、地域移行実績の成果として十分な活用とまでは言えない。また29.8%の病院でしか職員の地域自立支援協議会への参加がされておらず、病院内の退院を促進するための委員会の設置の取り組みは40.1%、PSWが退院に際して用いるツール、手順や手続きを定めたものが無い病院は74.2%にのぼった。ソーシャルワーカーの退院支援実践業務遂行自信度を概念化し46項目設定し、因子分析の結果30項目で構成された6因子を抽出した。「退院支援内容の評価」「地域生活具体化・準備支援」「退院後の生活状況のモニタリング」「退院への合意形成に向けた患者・家族理解」「退院可能性の発見」とした。6因子のうち、自信度の平均得点が高かったのは、「退院への合意形成に向けた患者・家族理解」であり、低かったのは「退院支援内容の評価」「退院後の生活状況のモニタリング」であった。以上から、退院支援内容を評価に役立つ、実践マニュアルや評価が定着できるような職場環境やシステムの整備が今後の課題であると示唆された。(2)事例研究:地域移行支援事業を活用して独居生活を送る事例本人、およびその家族、相談支援専門員に退院促進、阻害要因の探索目的にインタビュー調査を行った。促進要因は、地域生活移行経験者の実体験に触れたことが契機となり、そして本人、家族が地域での支援者との信頼関係形成と社会資源を知り地域生活への不安が軽減され、家族の支援の準備性が整ったことであった。阻害要因は外泊体験の失敗以降の退院への本人の不安と、職員による退院意欲不足というアセスメントの固定化であった。本事例を活用した病院職員を対象にした研修を通じて、患者のストレングスに着目したアセスメント、チームアプローチやそれを活かしたアセスメントの必要性を受講者は認識し、研修に対して90%が満足度と回答した。
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