2012 Fiscal Year Annual Research Report
心理学における統計解析の新しい役割・意味の創造およびその教授法の開発
Project/Area Number |
21530701
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
豊田 秀樹 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (60217578)
|
Project Period (FY) |
2009-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 構造方程式モデル / 項目反応理論 / 共分散構造モデル |
Research Abstract |
本年度は、主として以下の4つの研究を行った。一つは、評価基準の重要度評定と学生による授業の一対比較評定を統合する授業評価モデルの提案である。ここでは、必ずしもすべての講義を受講しない学生の評価を比較可能にする方法を提案した。これによって、公平な授業評価が可能になった。2つ目は、自由記述における汲みつくしの指標としての遭遇率の提案である。パレート分布を用い、収拾した自由記述のデータが、分析者が欲している情報をどの程度有するのかに関する知見を得る方法を研究した。自由記述だけでなく、WEBから自動的に取得したドキュメントにも適用着る方法である。3つ目は、項目反応理論における連続反応モデルを用いた顧客の価格感度測定である。テスト理論の中で利用される連続反応モデルを用いて、ID-POSデータへの適用例を通じて、顧客がどれほど価格の割引に敏感であるかを顧客ごとに調べる方法を提案した。これによって単なる値引き率の幾何平均ではない倹約度を考察することが可能になった。4つ目は、心理学研究における効果量・検定力・必要標本数の展望的事例分析である。我が国の学術論文に掲載されている研究の統計的仮説検定は,検定統計量の値と自由度,危険率や棄却率のみを報告している場合がほとんどであり,効果量の記載,検定力の分析はこれまで軽視されてきた。これに対しAPA 論文作成マニュアル(AmericanPsychologicalAssociation, 2001)では,統計的仮説検定の結果を報告する際は効果量を含める必要があり,研究結果を見出した根拠として検定力について十分に検討しなければならいと述べられている。この研究は、我が国の心理学会で効果量が重視される傾向に貢献するだろう。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ここまでの研究では、特段の障害もなく研究を進めている。理由として考えられることは3つある。1つは個人研究であり、自身の都合で精進すれば研究が遂行できるからである。2つめは、モデルの提案が主であり、データ関しては外部に存在するものを利用することが多いので、不測の事態が生じにくいこと。3つめは、スクリプト・論文として成果が残るので、調達すべき資料が安定していることが挙げられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、以下の3つの研究を行った後、これまでの研究のまとめを行いたい。1つ目は、多特性多方法行列に対する確認的因子分析モデルにおいて信頼性および妥当性の考察を一通りに定める方法の提案である。方法因子の因子得点の和が0になるという制約の下で、しばしば、識別問題を引き起こす多特性多方法行列の分析を安定的に行う方法を提案した。この研究によって、人事考課などでよく利用される360度評価の場面における、信頼性や妥当性の評価をより安定的に行う可能性が確保されるであろう。2つ目は、自由記述のカテゴリ化に伴う観点の飽和度としての捕獲率の提案である。昨年度は、パレート分布を利用した遭遇率の有用性について研究を行ったが、ここでは資源量推定におけるシュナーベル法を利用した方法を検討する。3つ目は、歪んだ分布を仮定した、構造方程式モデリングの研究である。ブランド価値を表現するブランド指標は、通常、正に歪んだ分布となることが多い。ブランドはもともと少数のガリバー的な勝ち組ブランドとそれ以外のブランドに大別されるので、その価値が正に歪んだ分布となることは自然である。しかし従来は構造方程式モデリングにおいて歪んだ構成概念を表現することは難しかった。本研究では、非対称正規分布を利用した構造方程式モデリングを研究したい。
|
Research Products
(15 results)