2011 Fiscal Year Annual Research Report
個体間ジレンマと個体内ジレンマの統合に関する実験的研究
Project/Area Number |
21530764
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
伊藤 正人 大阪市立大学, 大学院・文学研究科, 名誉教授 (70106334)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐伯 大輔 大阪市立大学, 大学院・文学研究科, 准教授 (60464591)
山口 哲生 東邦大学, 医学部, 助教 (70464592)
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Keywords | 社会的ジレンマ / 自己制御 / 遅延割引 / ゲーム理論 / 利己性 / 社会割引 / 共有と独占 / ハト |
Research Abstract |
本研究の目的は、ハトを対象に、報酬の「共有」と「独占」を巡る社会的ジレンマ場面における選択行動が、遅延割引や社会割引から定量化される「自己制御」や「利己性」とどのように関係するかを、同一個体のデータをもとに明らかにすることであった。本年度は、昨年度までに実施した「遅延割引測定」「社会割引測定」「社会的ジレンマ場面における協力選択測定」のすべての実験を完了し、得られた割引率や選択データ間の相関関係を調べることにより、「自己制御」と「利己性」の関係や、社会割引率の利己性の程度としての妥当性を明らかにすることを試みた。その結果、遅延割引と社会割引の両方において、双曲線関数は良い当てはまりを示したことから、双曲線関数は動物の価値割引の数理モデルとして妥当であることがわかった。次に、遅延割引率と社会割引率の間に有意な相関関係が得られなかったことから、自己制御と利己性の関係は独立であることが示唆された。さらに、社会割引率と協力選択率との間の相関関係を調べたところ、対戦相手がサクラのハトでその選択方略がランダムである条件において、有意な負の相関関係が得られた。このことは、社会割引率が利己性の程度の指標としてある程度妥当であることを示している。一方、遅延割引率と協力選択率との間には有意な相関が見られなかった。また、協力選択率は、チキンゲーム条件の方が囚人のジレンマ条件よりも高く、対戦相手がサクラの場合の方がコンピュータの場合よりも高く、対戦相手の選択方略がしっぺ返しである場合の方がランダムである場合よりも高いことが明らかになった。対戦相手の効果と対戦相手の選択方略の効果は、先行研究では明らかにされてこなかった新たな事実であり、ヒト以外の動物においても対戦相手の存在が協力選択を促進すること、さらに、しっぺ返し方略が協力行動を増加させる機能を持つことを示している。
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Research Products
(2 results)