2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21530772
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Research Institution | University of the Sacred Heart |
Principal Investigator |
高橋 雅延 聖心女子大学, 文学部, 教授 (10206849)
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Keywords | 偽りの記憶 / 同調 / 再認 |
Research Abstract |
本研究課題の当該年度の目的は、まったく経験してない出来事の記憶が想起されるという偽りの記憶と呼ばれる記憶エラーの出現メカニズムについて、社会的要因(想起の際に存在する他者の人数)を実験的に操作すことによって、偽りの記憶がどのような影響を受けるのかを明らかにることであった。 当該年度の基本的手続きは昨年度と同様に、偽りの記憶を実験的に生み出すDRMパラダイムを用い、通常の学習教示のもと、75語の単語(1リスト15語からなるリストを5リスト)を1語1秒の速度で聴覚提示した。これら75語の学習の終了後(30秒間の単純加算作業後)、提示していない5語の単語に関する再認テストを3回行った。まず、全員(合計48名)が直後に個人で再認する直後再認テストを受けた。次に(30秒間の単純加算作業後)、本物の実験参加者が2名の他者(実験協力者)の正しい判断を聞く群と聞かない群(統制群)をもうけ、グループ再認テストを行った(常に、本物の実験参加者は実験協力者の反応の後に、再認反応を求められた)。そして、最後に(30秒間の単純加算作業後)、遅延個人再認テストとして、全員が個人で再認判断を行った。 その結果、他者の正しい判断に同調する傾向(提示されていなかった項目に対して正しく「なかった」と答える傾向)が(有意差は認められなかったもののループ再認テストで認められたが、この同調効果は遅延個人再認では持続しなかった。これらの結果は、偽りの記憶と呼ばれる記憶エラーが他者の判断にさらされるという社会的要因によって、是正される可能性のあることを示していると思われる。さらにまた、これらの結果は、事件や事故の目撃者の記憶を聴取する際に、どのような他者の判断にさらされるかによっては、正確な記憶か得られる可能性のあることも示唆している。
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