2010 Fiscal Year Annual Research Report
音楽文化形成における教育の役割と自国文化認識の世代間、文化間比較
Project/Area Number |
21530942
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
石井 由理 山口大学, 教育学部, 教授 (70304467)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
塩原 麻里 国立音楽大学, 音楽学部, 教授 (10290652)
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Keywords | 音楽教育 / 文化的アイデンティティー |
Research Abstract |
本研究は日本における音楽教育と音楽的アイデンティティーの関連性を明らかにすること、タイ王国の音楽教育と音楽的アイデンティティーとの比較研究を行うこと、音楽的アイデンティティーに関する先行研究を調査することを目的としている。これらをとおして、最終的には音楽文化形成における学校教育の役割と自国文化認識の世代間、文化間比較を目指す。日本国内の高齢者、タイの大学生を対象とした質問紙調査は既に21年度に実施しており、22年度はこれらの結果に基づいて日本での調査に関する部分的な成果発表を行うこと、タイでの質問紙調査の分析を進めること、音楽的アイデンティティーおよびタイの文化政策に関する文献調査をすることを並行して実施した。また、日本の大学生のデータを補足するための質問紙調査を追加実施した。 分析の一つとして、これまでに調査した山口県在住の高齢者および本研究で調査した東京近郊在住の高齢者のデータを、2010年現在64~71歳と72歳以上の2グループに分け、西洋芸術音学重視の1951年学習指導要領の影響が強いと思われる前者と、それ以前の教育を受けた後者との違いを考察した。その結果、前者は後者および大学生と比較して最も外国の曲を好み、最も西洋芸術音楽を好む世代であること、郷土の音楽としては自分自身の故郷の民謡を音楽的アイデンティティーの一部として維持していること、「日本の音楽」としては唱歌などの回答が他グループよりも多い世代であることが明らかになった。これは音楽文化形成への学校教育の影響を否定しない結果であり、実証研究として意義ある成果が得られた。高齢者と大学生の比較では、大学生の「郷土の音楽」に対する回答で教科書掲載曲以外の伝統的民謡が減り、新たに作曲された地元音頭の類が増えていること、「好きな音楽」から唱歌系がほぼ姿を消していること等が明らかとなった。
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