2009 Fiscal Year Annual Research Report
音楽科教師の実践的力量形成に関する研究:演奏指導力を中心に
Project/Area Number |
21530954
|
Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
菅 裕 University of Miyazaki, 大学院・教育学研究科, 准教授 (30272090)
|
Keywords | 音楽教育 / 演奏指導 / 吹奏楽 / PAC分析 |
Research Abstract |
中学生による吹奏楽合奏VTRを5名の経験年数の異なる吹奏楽指導者に診断させ,視聴中の各指導者の内言発話を分析した。その結果,比較的指導経験の浅い指導者が,<音色・音質・アーティキュレーション><テンポ・リズムの正確さ>など,音楽の表層的な要素に関する指摘に偏っているのに対し,指導経験が比較的長い指導者では,相対的にこれらの内容についての発言は少なくなり,かわって表現解釈にかかわるより全体的・総合的内容について発話する傾向が見られた。次に各指導者自身による合奏指導の内容のカテゴリー分析とPAC分析に基づくインタビューを実施した。その結果,経験年数が比較的短い4名の指導者を特徴付ける要素として浮かび上がったのは「正確な演奏の追求」であった。彼らは個々のリズムや音程の修正を目的として短いパッセージの繰り返し練習に重点を置く傾向にあった。これに対し経験年数の長い指導者は,楽曲の各部分の分節点や変化と対比の関係,緊張感の推移など,楽曲構造についての演奏者の総合的な音楽理解を促進し,それに基づく自発的・積極的表現姿勢を引き出すことを重視していることが明らかとなった。また経験の浅い指導者の合奏練習では,<指示>が指導方法の中心となっていた。これは合奏指導における彼らの主要な関心が個々の音の「正確さ」に向けられているために,演奏を判定し修正方向を伝達することが指導者の役割の中心課題となりやすいためだと考えられる。これに対し,経験年数の長い指導者の合奏では,演奏者の自主的な調整作業を促したり,<モデリング><理論的説明><メタファー><質問>など多様な方法で演奏者の楽曲理解をはかり,そこから演奏者自身の主体的な音楽表現を引き出すことが意図されていた。
|
Research Products
(2 results)