2010 Fiscal Year Annual Research Report
タイヒミュラー空間及びクライン群の変形空間の複素解析的構造の研究
Project/Area Number |
21540177
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
宮地 秀樹 大阪大学, 大学院・理学研究科, 准教授 (40385480)
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Keywords | タイヒミュラー空間 / タイヒミュラー距離 / 極値的長さ / リーマン面 / 小林距離 / Gardiner-Masur境界 / リプシッツ代数 |
Research Abstract |
今年度は,前年度に引き続きGardiner-Masurコンパクト化についての研究を行った 1 前年度末に得た一意的エルゴード的境界点に関する結果を単純閉曲線に対し拡張した.そして,すべてのタイヒミュラー測地射線が,Gardiner-Masurコンパクト化において極限を持つことを証明した.タイヒミュラー距離はタイヒミュラー空間における自然な複素構造に関する小林距離と一致するため,この結果は,小林距離に関する測地円板(タイヒミュラー円板)は単位円板の半径方向に関して極限を持つことを意味する.従って,本研究がタイヒミュラー空間の複素構造と曲面の位相的性質との関係に関する一指針になることを期待している.これらの結果は論文にまとめ既に投稿している 2 タイヒミュラー距離に関してリプシッツ条件を満たす有界函数全体のなす代数を研究し,その代数的および位相的性質であるストーン・ワイヤストラス型の定理を得た.さらにリプシッツ代数内のある部分族によるコンパクト化(Qコンパクト化)はGardiner-Masurコンパクト化と一致することを示し,この系として任意の距離空間からタイヒミュラー空間へのリプシッツ写像は,与えられた距離空間のリプシッツ函数に関するコンパクト化からGardiner-Masurコンパクト化に連続に拡張することを得た.例えば,タイヒミュラー距離から単位円板への正則写像はリプシッツ函数であるので,この研究がタイヒミュラー空間の複素構造の解明に関する一道具になることを期待している
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