2009 Fiscal Year Annual Research Report
消散項を持つ双曲型方程式の解の漸近挙動と特異摂動問題
Project/Area Number |
21540201
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
山崎 多恵子 Tokyo University of Science, 理工学部, 教授 (60220315)
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Keywords | Kirchhoff方程式 / 消散項 / 大域解 |
Research Abstract |
張力の弦の伸びによる影響を考慮した弦の振動モデルとして導入された準線形双曲型方程式であるKirchhoff方程式は、数学的には主部の係数が解に非局所的に依存する準線形双曲型方程式として研究されている.実解析的またはそれを拡張した枠組みでは大域解の存在は知られているが、一般のソボレフ空間の枠組みでは小さい初期値に対しても大域解の存在は知られていない。 摩擦の影響を考慮した消散項をもつKirchhoff方程式に関しては、消散項の係数が正定数のときには,小さい初期値に対する大域解の存在が知られている。消散項が時間に関し減衰すると、消散項の影響が弱くなるので大域解の存在を示すのが難しくなる。消散項をもつ線形双曲型方程式の場合は、消散項の減衰次数が臨界次数より大きいときには解は双曲型方程式の解に漸近し、小さいときにはエネルギーが時間減衰することが知られている。ここでは減衰次数が臨界次数より小さい消散項を持つKirchhoff方程式について考察する。消散項の係数が時間のみに依存する場合、または、時間のみに依存する関数と空間関数の積になっており有界領域の場合には、時間変数に関する減衰次数が臨界次数より小さいときの小さい初期値に対する大域解の存在は知られている。本研究では、必ずしも有界とは限らない領域上で、時間変数と空間変数に依存し時間変数に関する減衰次数が臨界次数より小さい消散項をもつKirchhoff方程式の小さい初期値に対する大域解の存在及びエネルギーの時間減衰評価を示した。時間減衰次数は、消散項の減衰度から定まる。
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