2011 Fiscal Year Annual Research Report
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21540213
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
吉田 裕亮 お茶の水女子大学, 大学院人間文化創成科学研究科, 教授 (10220667)
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Keywords | 関数解析学 / 作用素環論 / 非可換確率論 / 変形分布 / 量子情報理論 |
Research Abstract |
本研究の目的は、非可換確率空間上での確率分布の変形ならびに確率分布に付随して導入されるエントロピーならびに各種情報量の変形を主たる課題としている。確率分布の変形に関する課題に関して本年度は、q-変形Meixner分布をもつ自己共役な作用素を q-Fock 空間上で構成することに成功した。具体的には、q-Fock 空間上のq-2重生成作用素, q-2重消滅作用素ならびに、これらに基づく個数作用素を用いて構成を行った。この結果は学術雑誌 (J. Phys. A.) に掲載されている。上記の q-変形 Meixner 分布は, 今まで知られていた「絡み有り分割」の交叉数のq-数え上げを行うことにより得られるq-Meixner 型作用素とは異なり, 変形パラメータが q ではなく q^2 で与えられることが大きな特徴である。 通常の確率論では, Meixner クラスの確率分布は Fisher 情報量やエントロピーの観点からも特徴的な分布であり, 幾つかの分布クラスのエントロピーならびに Fisher 情報量による特徴付けも知られている. この観点から本年度からは、確率分布の変形と、それに付随したエントロピーおよび Fisher 情報量の変形に関する調査を開始した。まず、通常の確率論と自由確率論において調査を行い、一般の変形分布への足掛りとした。その結果、通常の確率論および自由確率論の双方において、相対エントロピーが相対 Fisher 情報量の積分表現が同じ形式で実現可能であることを明らかにした。この成果の一部は、ポーランド科学アカデミー主催の国際シンポジウムで報告も行った。さらに、この新たな知見を得られたことにより、本年度の研究期間を3ケ月延長し、相対エントロピーの変分と相対 Fisher 情報量の関係の詳細な調査を行うことにより、学術論文への投稿のための取り纏めを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Meixner 分布の変形に関してq- Fock 空間上の自己共役作用素で構成できたことは、当初の計画であるFock 空間の変形に基づく確率分布の変形が得られたことにあたる。また、平成23年度からは確率分布に付随して導入される Fisher情報量ならびにエントロピーの変形の課題に着手できたことも当初計画通りの進捗状況であると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究課題の推進に関して、確率分布の変形に付随して Fisher 情報量ならびにエントロピーの変形に発展させて行きたいと考えている。また、2012年9月にポーランド科学アカデミー主催の国際シンポジュウムで当該研究の成果を発表予定である。このような国際会議では、海外の第一線で研究している関連研究者と直接に研究討議を行うことが可能な重要な機会である。この会議への出席ならびに成果発表に科研費を活用したい。
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