2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21540352
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加藤 雄介 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 准教授 (20261547)
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Keywords | 超固体 / ジョゼフソン効果 / 障害物ポテンシャル / 非古典的回転慣性 / 永久流 / グロス・ピタエフスキー方程式 / ボゴリューボフ方程式 / ポモー・リカ模型 |
Research Abstract |
本年度は、前年度における1次元模型の成果を受け、到達距離が有限である2体相互作用を有するボース系に対する2次元グロス・ピタエフスキー方程式の研究を行った(以下この模型を2次元Pomeau-Rica模型と呼ぶ。1994年、PomeauとRicaによってこの模型が超固体の模型として導入され、その基底状態の性質や超流動特性が初めて詳細に調べられたからである)。まず基底状態を、平均密度一定の下で、相互作用の強さと平均速度をパラメターにとって定常解を求め、さらにそれぞれの解のまわりの線形安定性解析を行った。その結果として相互作用の強さと平均速度を軸にとった平面上での安定状態の相図を得た。その結果、安定状態として超流動液体層、超固体相、ストライプ相の3種の状態が得られた。ストライプ相とは、流れと平行な方向に一次元的な周期構造を持つ相のことであり、80年代に、IordanskiiやPitaevskiiらによって、ランダウ臨界速度を超えた状況で実現する相として研究されていたものである。本研究で得られた成果は、先行研究で得られていた、平均速度がゼロの場合の基底状態の相図を拡張したものと位置付けることができる。ここでの成果の意義は、以下の三点にある。第一に、超固体相が平均速度が大きくなるにつれて、どのように不安定化するかを示す具体例を初めて提示したことは、超固体の安定性の理解を深めるために必要な基礎的知見となる。第二には、流れの中でストライプ相が安定相として実現するパラメター領域が実現することに意義がある。第三の意義は、以下に述べるジョゼフソン効果の研究の出発点になるという点にある。 上記の成果を踏まえて、2次元Pomeau-Rica模型に障害物をおき、直流ジョゼフソン効果の有無を数値的に調べた。その結果超固体状態においても直流ジョゼフソン効果は存在し、障壁の両側にある凝縮体の位相差と質量流の関係式(ジョゼフソン関係式)をいくつかの高さの障壁に対して得ることができた。障壁が高くなるにつれて、臨界質量流は減少し、ジョゼフソン関係式は超伝導体で見られる正弦波的な関数形に漸近することも確認した。これまで、2次元Pomear-Rice模型では、障害物がなければ超固体相は超流動特性を示すが、障害物を入れた場合には、臨界質量がゼロになると先行研究(Pomear-Rice 1994)で結論されていた。それに対して、我々の本年度の成果は、臨障害物下の2次元Pomeau-Rica模型においてもジョゼフソン効果という形で超流動性を示し、その臨界質量流がゼロでない有限の値を取ることを示している。前年度の結果(1次元Pomeau-Rica模型におけるジョゼフソン効果)と合わせて、本研究の成果は超固体相における超流動特性が、障害物すなわち散乱体をあらわに考えて生き残ることを示す初めての具体例と位置付けることができ、超固体相における輸送特性に関するより一般的理論を構築する上での足掛かりになるであろうという意味で重要な知見である。
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Research Products
(18 results)