2011 Fiscal Year Annual Research Report
超伝導転移温度の擬クーロンポテンシャルの決定を含む第一原理計算
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21540353
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高田 康民 東京大学, 物性研究所, 教授 (00126103)
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Keywords | 物性理論 / 超伝導 / 計算物理 / 第一原理計算 / 強相関電子系 / 擬クーロンポテンシャル / 転移温度 / ヤーン・テラー系 |
Research Abstract |
フォノン機構の超伝導体を主な対象として、超伝導転移温度Tcを擬クーロンポテンシャルの決定をはじめとしたクーロン斥力の効果も含めて第一原理的に微視的に計算する手法とその計算コードを開発し、それを用いて超伝導機構へのより深い理解と高温超伝導体合成に向けて理論的観点から有用な示唆を与えることを目的とした研究である。具体的には、(1)厳密な超伝導方程式にG_oW_o近似を適用して得たギャップ方程式を基礎にして、一様密度電子ガス系のフォノン・プラズモン複合機構を非均一密度電子系に拡張し、Tc最大化の条件を探る、(2)密度汎関数超伝導理論との対応を考えつつ、強相関強結合系にも適用可能な定式化を完成させ、室温超伝導の可能性を探る、という2つを主な目標としている。 さて、(1)に関連して、この問題では不均一系においてフルに振動数と波数に依存した分極関数の計算が必須であるが、昨年度まではAbinitやVASPといった既存の計算パッケージからの改良を企てたが、所望する精度での計算が難しいと分かったので、今年度は計算コードを最初から開発し直し、しかも、超並列化も果たした。 次に、(2)に関連して2つの方向から模索した。その一つはヤーン・テラー結晶における超伝導の問題で、一般的観点から理想ヤーン・テラー結晶を定義し、そこではフォノン機構とスピン揺らぎ機構や多バンド系の特徴である軌道揺らぎ機構などの電子機構が協奏してエキゾチックな超伝導が形成されることを示した。もう一つは密度汎関数超伝導理論における対相互作用の汎関数形に関して、弱結合系の汎関数系を確定すると共に、強結合強相関極限領域において正確なものに収束していく汎関数形の理論を具体的に構成した。そして、この際、鍵になる物理量は「対形成積分核」というべきものであることをその定義とともに明確にした。この成果については、具体例とともに論文準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2つの目標のうち、(1)については分極関数のコード開発に手間取り、やや遅れているが、(2)については当初は予定していなかったヤーン・テラー系の問題に寄与できたほか、この目標における最終目的ともいうべき汎関数形が対形成積分核という新概念とともに構成できたので、当初の計画以上の進展である。これら2つを合わせて考えれば、おおむね順調といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である平成24年度はやや遅れている目標(1)に大部分の力を注ぐ。具体的には、完成した分極関数の計算コードを用いて、超伝導転移温度Tcを計算するコードを再構築し、この2年間、懸案になっている次の2つの課題を遂行する。 (a)STO系をはじめとして、ペロブスカイトを基礎にした極性の強い人工超格子構造に注目し、そのような系での超伝導発現機構を提案する。そして、格子周期や電子密度揺らぎの大きさとTcとの相関を調べ、最大のTcを得るための条件を提示する。 (b)C12A7系をはじめとした籠に閉じ込められた低密度電子系(エレクトライド系)で発見されている超伝導をプラズモン機構の観点から調べる。特に、籠の形状とTcの相関に注目する。 このほか、余裕があれば、目標(2)に関連して、強相関強結合フォノン系における短コヒーレンス長超伝導に特化して対形成積分核の具体的な計算方法を開発し、それをフラーレンなどの分子性結晶へ応用する。
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Research Products
(7 results)