2010 Fiscal Year Annual Research Report
空間反転対称性のない重い電子系の量子臨界点近傍の磁性と超伝導の微視的研究
Project/Area Number |
21540366
|
Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
松村 政博 高知大学, 教育研究部・自然科学系, 教授 (20127400)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西岡 孝 高知大学, 教育研究部・自然科学系, 教授 (10218117)
加藤 治一 高知大学, 教育研究部・自然科学系, 准教授 (60363272)
小堀 洋 千葉大学, 理学研究科, 教授 (10153660)
|
Keywords | 重い電子系 / 空間反転対称性欠損 / 量子臨界点 / 超伝導 / 磁気秩序 / 核磁気共鳴 / 核四重極共鳴 |
Research Abstract |
前年度に引き続き、空間反転対称性のない重い電子系超伝導体であるCeCoGe3を取り上げ、次のことを目的として研究を行ってきた。(1)圧力印加によってQCPに至るまでの磁気秩序の微視的変化に対する、反転対称性欠損が及ぼす効果の有無や、またQCP近傍の超伝導がどのような磁気的背景のもとで出現するのか、(2)QCP近傍での超伝導状態における超伝導電子対の対称性をCo核のNMK/NQR(核スピン格子緩和時間やナイトシフトの温度変化)によって調べる。(2)の超伝導に到達するためには2つの極限状態(極低温、超高圧)でのNMR/NQR測定をクリアーしなければならず、現在のところ多結晶試料において1.5GPaの圧力、液体He温度までの温度域で巨視的、微視的測定を行っている。この系はこのような比較的低圧力でもその磁気構造をめまぐるしく変化させることが巨視的な測定だけでなく微視的な測定でも分かった。常圧ではCo核は4種類のc軸方向の内部磁場を受けている。これはCe磁気モーメントがc軸方向だけを向くイジングスピン的になっており、このイジングスピンの反強磁性配列が磁気秩序をもたらし、試料内の領域に応じた反強磁性配列の変化が4種類のCo核の内部磁場をもたらすと考えられる。約0.7GPaの圧力印加でCo核は4種類から2種類の内部磁場を持つように、その相対強度を変化させる。これ以上1.5GPaまでの圧力ではCo核の共鳴スペクトルは2種類のままほとんど変化しないことが分かった。以前から常圧ではT_<N1>=21Kでc軸方向に強い磁化容易軸異方性をもってフェリ磁性的な転移をし、さらにT_<N2>=12K,T_<N3>=8Kで逐次転移を示すことが知られていたが、これらはイジング的な反強磁性配列の変化の結果だと考えられる。T_<N2>、T_<N3>でCo共鳴スペクトル線形や強度の変化を見ることができた。微視的な測定でこの変化をとらえたのは初めてである。このような磁性変化が反転対称性欠損と関係あるのか現時点では不明であるが、本年度は、更に印加圧力を高めて測定を行いQCP近傍の超伝導がどのような磁気的背景のもとで出現するのか、また空間反転対称性欠損が複雑な磁気秩序に及ぼす効果があるのかを見出す計画である。
|