2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21540416
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
宮崎 州正 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (40449913)
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Keywords | 化学物理 / 統計力学 / 物性基礎論 / ガラス転移 / 臨界現象 / モード結合理論 / 動的相関長 / レプリカ理論 |
Research Abstract |
ガラス転移の本質はまだ未解明である。様々な競合する理論が提案されているが、平均場的な描像すらも確立していないのが現状である。またガラス転移の臨界揺らぎとも言うべき「動的不均一性」の完全な同定にも至っていない。我々は、平成22年度に引き続き、提案されている平均場描像を検証するために、平均場模型に近い液体として長距離相互作用液体系のガラス転移点近傍でのダイナミクス、そしてその背後の熱力学に関する数値的研究を行った。特に、ガウス型相互作用モデルと呼ばれる特異な液体模型の大規模な数値計算による研究を行った。その結果、この模型の動的性質が、ガラスの平均場理論の候補と呼ばれているモード結合理論によって非常によく説明されることが分かった。特に動的不均一性が抑えらえられることを示す指標として、van Hove関数と呼ばれる相関関数などを精密に定量化した。その結果、本来、ガラス転移点近傍で必ず出現すると考えられてきた、不均一な運動の分布がほとんどないことが分かった。さらに、非エルゴードパラメータなどの定量的一致、ストークスアインシュタイン法則の破れの抑制、非ガウスパラメータの抑制など、新しい結果を得た。しかも、モード結合理論の「欠点」として我々が22年度に発見した、平均場極限における非エルゴードパラメータの過大なショルダーが、ガウス型相互作用モデルでも見られることが分かった。また、この模型の熱力学的性質も詳細に調べ、今まで予想の域を出なかった、液体論的性質を検証したほか、核生成が抑えられてガラス化しやすい理由の解明を行った。 また、これと並行して、ランダム系のガラス転移における動的不均一性の起源の数値的研究、およびモード結合理論の量子液体への拡張なども行った。 これらの研究成果は国際雑誌に発表した。
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Research Products
(28 results)