2011 Fiscal Year Annual Research Report
低エネルギー電子による生体分子損傷の第一原理シミュレーション法の開発
Project/Area Number |
21550005
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
高柳 敏幸 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (90354894)
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Keywords | 電子衝突 / 解離性電子付着 / 溶媒和電子 / 反応動力学 / 分子クラスター / 電子脱離 |
Research Abstract |
10eV以下という分子のイオン化エネルギーよろも低い運動エネルギーを有する電子が、解離性電子付着過程を経てDNA等の生体関連分子に損傷させることできるが実験的に見出されて以来、電子ビームと分子線を組み合わせた実験的研究が欧米を中心にこれまで盛んに行われてきた。しかしながら、解離の詳細なメカニズムは分子系が複雑であることもあり、よく理解されているとは言いがたい。解離性電子付着過程を理解するには、一時的な寿命をもつアニオンの電子状態を記述できる散乱理論をベースにした、すべての解離過程を記述できる新しい理論が必要である。 本年度は多原子分子の解離性電子付着断面積を理論的に計算できる比較的簡便な方法論の開発を行った。一時的なアニオン状態を共鳴状態として取り扱うLocal Complex Potential Mode1に基づいて、まず分子の全自由度を考慮したポテンシャルエネルギー曲面を作成する。分子の中性基底状態のポテンシャルエネルギー曲面上で量子論に基づく経路積分分子動力学計算を実行し、分子構造とそのときの運動量をサンプリングする。これらを初期条件として、アニオンのポテンシャルエネルギー曲面上で古典的なトラジェクトリー計算を行い、同時に電子脱離確率を積算する。これによって、ある程度の量子効果を含んだ解離性電子付着断面積を計算できる。本年度は、この方法をH_20とCF_3C1の解離性電子付着過程に適用した。H_20については厳密な量子論の結果と比較して良好な結果を得た。また、CF_3C1については実験と比較したところ、解離断面積の温度効果をうまく再現することができることを見出した。今後は、この方法を生体関連分子に適用していく必要がある。
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Research Products
(7 results)