2009 Fiscal Year Annual Research Report
生体内多核遷移金属錯体の電子構造、化学反応性および機能発現に関する理論的研究
Project/Area Number |
21550014
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Research Institution | Toyota Physical & Chemical Research Institute |
Principal Investigator |
山口 兆 Toyota Physical & Chemical Research Institute, フェロー (80029537)
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Keywords | 生体内多核遷移金属錯体 / 電子構造 / 化学反応性 / 機能発現 / 理論的研究 / p450 / 酸素添加反応 / ラジカル機構 |
Research Abstract |
本年度は生体内多核遷移金属錯体の中でも炭化水素化合物の酸素添加反応による無毒化過程おいて重要な役割を担う酵素p450およびCompoundIと称される鉄オキソ化合物の電子構造とその化学反応性および機能発現について理論的研究を実行した。特に、これら酵素系の活性中心に存在するL-Fe=0(Lはポルプイリンなどの配位子)の電子状態として基底4重項および2重項(この場合を2状態モデルと言う)に加えて2つの励起2重項を考える4状態モデルを構築し、水素引き抜き反応のラジカル軌道相互作用ダイアグラムを求め、生成したアルキルラジカルとヒドロキシラジカルの再結合様式を解明した。さらに配位子場が弱い場合にはデルタ軌道部分が3重項状態になる高スピン状態(6重項および2つの励起4重項状態)も考慮することにより、水素引き抜き反応の選択則の導出に成功した。次に此れ等の選択則の妥当性奇検討するため、スピン分極型ハイブリッド密度汎関数法(HDFT)を用いて上記反応の遷移状態および不安定中間体の構造と活性化エネルギーなどを求め、反応経路ダイアグラムを構築した。其の結果、理論的に導出した選択則と計算結果が良く対応することが判明した。さらに、他のグループにより報告されている計算結果も総合的に検討することにより、上記基底および励起状態のラジカル反応選択則を確立することに成功した。また、L-Fe=0種における磁気的相互作用様式とラジカル反応様式との相関関係の解明は生体分子磁性の理論の体系化の第一歩であり、今後、他の生体内多核遷移金属錯体の反応様式の解明にも展開しうる見通しが得られた。
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