2010 Fiscal Year Annual Research Report
高精度多参照理論による大規模π共役系の強相関的な多電子励起状態の解析法と応用
Project/Area Number |
21550027
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
柳井 毅 分子科学研究所, 理論・計算分子科学研究領域, 准教授 (00462200)
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Keywords | 理論化学 / 量子化学 / 電子相関 / 計算化学 / π共役 |
Research Abstract |
π共役有機系分子の機能性として現れる重要な多電子励起状態を高精度に解明するための電子状態理論を開発を行った。また、その量子化学計算を通じて、興味あるπ共役系の励起状態の解明に関する理論研究を行った。密度行列繰り込み群を基礎とする理論手法に加えて、オリジナルな正準変換電子相関理論を用いた、励起状態計算法の研究に取り組み、その実装、ソフトウエアの開発を行った。高度な多体理論に基づく新手法は、共役分子の強相関的な多電子励起状態を扱える高い性能を有する。応用計算として、有機分子でありながら磁気的な性質をもつ有機磁性体の基本モデルとなるポリカルベンの電子状態計算を行った。有機磁性体が単分子磁石としての分子デバイスとして機能するには、より大きな磁気モーメントを持ち、かつ寿命が長く、異なるスピン状態間のエネルギー差が大きく高温でもスピン配列を崩さないものが望まれる。本研究では、ポリカルベンの磁気的な性質を詳細に解析するために、分子の電子状態に関して本理論手法を用いて高精度に大規模に理論計算することで、そのスピン状態の特異的な性質を初めて明らかにすることができた。成果は、カルベンの数に対する、高スピン状態と低スピン状態のエネルギー差が、カルベン数の増加にしたがい縮まるという発見であり、この性質は、従来型の古典スピン論に基づく理論解析(密度汎関数法など)の結果を覆すもので大変興味深いものであった。この理論解析では、密度行列繰り込み群法に基づく新しい方法論(多参照法)を用いて、従来扱えなかった多数の電子配置を取り扱うことで複雑な電子スピン状態を精密に一般的に取り扱うことで初めて解析可能となった。
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Research Products
(5 results)