Research Abstract |
研究代表者が考案した振幅変調多重化フロー分析法(AMMFA)は,流量を周期的変動させた各液を合流させ,下流で得られる検出信号を周波数解析することで,単純なシステムで多試料/多成分同時分析を可能にするフロー分析法である。初年度は,システムの構築と分析条件の最適化を行い,多試料同時分析へと応用した。2年度目は気節導入による感度向上と,1試料中の多成分同時定量について検討した。本年度は,目的物質を変えて「1試料中の多成分同時定量」の研究を継続するとともに,さらなる感度向上をめざして「気節-相分離AMMFA」の研究を行い,以下のような成果を得た。 「AMMFAによる1試料中の多成分同時定量」については,硝酸イオンおよび亜硝酸イオンを目的物質とした。1試料を2流路(1つには還元カラムを導入)から導入し,下流でGriess法による吸光光度測定を行った。気泡導入による高感度化(分散抑制)を検討し,μmol/Lレベルでの定量を可能にした。原著論文として投稿し,掲載決定済みである。 「気節-非相分離AMMFA」では,導入した気泡を検出器直前で脱気することなく検出器へと導き,信号処理によって気泡由来の信号を除去し,液相信号の解析を行う。これによって脱気後の分散を避け,さらなる感度向上を達成できる。検出信号の傾き,および液相信号からの変位にそれぞれ閾値を設定し,いずれかを超えたとき検出信号を気泡ノイズとみなして排除した。さらに,移動平均処理によって信号を平滑化した。メチルオレンジ水溶液を試料とした場合には,AMFA(初年度の方法)で得られた振幅に対し,気節-相分離/AMFA(2年度目の方法)では1.17倍に,さらに気節-非相分離/AMFA(本年度の方法)では1.73倍に感度が増大した。開発した方法をリンの吸光光度定量に応用した。本研究は,国際学会における招待講演や,国内学会における登壇者学生の「若手講演賞」受賞につながった。原著論文は現在準備中である。
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