Research Abstract |
圧延により製造された高純度銅(純度99.99%)の箔材に熱処理を施すことによって得られる立方体方位に近い超粗大結晶粒から,引張および曲げ試験片(ダンベル型及び短冊型)を放電加工により注意深く切り出し,単一面すべりで変形する結晶方位に加えて,多数のすべり系(多重すべり)が活動する結晶方位の試験片を準備し,これらに対する引張試験,マイクロ曲げ試験を実施した.曲げ試験においては,単一面すべり試験片に比べて,多重すべり試験片の方が,寸法効果が大きく現れることを確認した.さらに,反転曲げ試験を実施し,単一面すべりの場合は等方硬化挙動に寸法依存性がほとんど見られないことを確認した.これは,すべり系の相互作用があってはじめて等方硬化に寸法効果が現れることを示している.つまり,ひずみ勾配に伴って蓄積する幾何学的必要転位群が,林立転位としてのみ作用し,自己硬化には寄与しないことが強く示唆された.反転試験においては,バウシンガー効果が明確に観察された.これは,幾何学的必要転位群が背応力を生成している直接的な証拠である.理論上,背応力は幾何学的転位密度の空間勾配に対応するので,本実験結果は,試験片の板厚方向に高次の塑性ひずみ勾配が存在することを示している.これは単純な曲げ理論による直線的なひずみ分布では説明できず,表面において塑性ひずみ勾配が規定される何らかの条件が存在することを示唆している. 理論の数値計算への応用については,大変形解析における有限要素の選択の影響について詳しく調べた.変位速度に対しては2次要素を用い,幾何学的必要転位密度に対しては1次要素を用いると,多くの場合,適切な数値解が得られることを明らかにした.
|