Research Abstract |
超音波ドップラ流速計(UVP)並びに超音波時間相関法(UTDC)による固液混相流TVF(Taylor Vortex Flow)のカオス流動,および乱流への遷移について実験を継続した.実験条件には前年度同様,上下固定境界端を有するアスペクト比Γ=3.0,半径比η=0。667,正規2セルモードのTVFを用いた.この結果,UVPによる計測ではReynolds数(Re)の増加にしたがって,波動TVF,準周期TVFのスペクトル群が観察され,且つ固定境界端に由来すると見られる特異的な低周波成分も再現された.一方,時間解析が困難であったUTDC法を改良した結果,渦の片側セルに限定されるもののスペクトル解析が可能となった.これを従来の結果と比較すると,(1)低周波成分は目下観察されないこと,(2)準周期解における第二基本周波数の存在は渦界面領域のみに限定されること,(3)それとは逆に第一基本周波数は,Reynolds数の増加とともに渦界面では消えて行くこと,などの知見が得られた(UTDCの自己相関係数は0.90に固定した).本結果については更に詳細に検証する必要がある.UTDCによる濃度分布計測の可能性については,一定の領域内(トランスジューサーから75mm内)において,静止状態のφ80μmナイロン粒子懸濁液の濃度10,000ppmまでは,距離にほぼ無関係に,受信カウント数と濃度との直線相関が得られ,検量が可能と判断した.しかし,流動が生じると,その影響を少なからず受ける可能性が出ており,引き続き検討が必要である. TVFバイオリアクター内における流れの遷移過程と細胞の損傷率について,前年度と同様せん断に弱いスピルリナ植物細胞を用い,特に内円筒半径φ28mmに対して6mm程度偏心加工した内円筒を用いて乱れによる細胞の損傷率を調べた.Re=100,000で4日間培養して調べた結果,Γ=1,3とも細胞増殖量に比べて約1/100の損傷率が発生した.ただし細胞が損傷して初めて検出されるChlorophyll-a量は微量で誤差も大きいと考えられる,細胞損傷の兆候として,可視化波長領域全域に見られた濁度の上昇が,その後引き起こされる細胞損傷の予測を示す大きな傾向として把握できる可能性がある.
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