2009 Fiscal Year Annual Research Report
液体およびその界面における分子スケールヘテロ構造と熱・運動量・物質輸送特性
Project/Area Number |
21560199
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小原 拓 Tohoku University, 流体科学研究所, 教授 (40211833)
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Keywords | 輸送特性 / 液体 / 界面 / 分子動力学 / 熱伝導 / 物質輸送 |
Research Abstract |
ナノスケール熱流体の新たな機能を見出し、そのメカニズムを解明して応用につなげようとする全体構想のもと、(1)ナノスケール固体構造中に収容された液体、(2)液体界面、(3)液体膜・流動性分子膜、(4)ポリマー分子液体、などが示す低次元化や高非平衡などの特徴を利用して、新たな熱・運動量・物質輸送機能を作り出すための基礎研究を行うのが本研究の目的である。本年度は、まず固液界面とポリマー分子液体を対象として、分子動力学解析を行うための計算系を作成し、解析を開始した。典型的なポリマー分子液体として採用した直鎖アルカン飽和液において温度勾配下の熱伝導を観察し、熱流束を構成する分子間のエネルギー伝搬を解析した結果、デカンなど低分子量で鎖長が小さい分子からなる液体の場合は分子間のエネルギー伝搬が卓越するものの、鎖長が大きくなると共に分子内の強固な結合に沿ったエネルギーの伝搬によりエネルギーが空間中を移動する効果が大きくなり、分子量数百程度で分子内エネルギー伝搬が分子間エネルギー伝搬に卓越することが明らかとなった。また、液体水がマグネタイト壁面に接する固液界面系において、鉄イオンなど各拡散種の移動を支配する自由エネルギーの分布を計測し、固体壁面極近傍において各拡散種により自由エネルギーが相当程度異なる分布を示し、また、自由エネルギーの鞍部により示唆されるイオンの移動経路が固体壁面分子の結晶格子スケールの配置に大きな影響を受けることがわかった。さらに、水中に自己組織化的に形成された脂質二重膜について、その構造と膜平行方向・垂直方向の熱エネルギー伝搬特性を解析し、膜構造と連携した非等方性熱伝導特性を示唆する結果を得た。
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