Research Abstract |
この研究の第1は,砂漠,山林,田畑,海面等に代表されるランダム粗面に沿う電波伝搬特性の数値シミュレーションによって,地表面の形状に関する統計量と電磁界の統計量すなわち伝搬特性との関連性を定量的に把握することであった.この問題に対しては,これまでに申請者が開発してきたランダム粗面生成のための畳みこみ法と電磁界解析のためのDRTM法を駆使することによって,複雑な電磁環境下における伝搬特性の数値シミュレーションが可能となった.その結果によると,ランダム粗面に沿う電界強度分布のアンサンブル平均値が,簡潔な式で与えられる1波および2波モデルの表現式に一部変形を加えれば,その分布状況を適格に知ることが可能となった.この変形において重要となるパラメータが,振幅補正値αと距離特性のオーダβである.この二つのパラメータが決定できれば,簡単な式で通信距離を推定することができることを明らかにした.また市街地伝搬に関しては,伝搬特性推定に良く用いられている秦の実験式を参照すれば,先の2個のパラメータが容易に得られることを明らかにした. 第2は,ランダム粗面上をスレスレに飛来するターゲットからの反射特性をDRTM法に基づいて数値解析し,レーダ受信におけるクラッタ除去の可能性を探るものであった.シミュレーションの結果から,ターゲットからの受信波がクラッタ波に埋もれてしまい,レーダの指向性を鋭くしてもターゲットの検知は難しいことを定量的に明らかにした.また,ドップラー波のスペクトル分布についても数値解析を行い,この分布の特性を上手く利用すれば,レーダ探知距離の向上につなげることが可能であるとの知見を得た. 第3は,バッテリ電源の節約と基地局の建設費用の削減に向けた方策として,基地局の最適配置に関するシミュレーションの実行であった.この研究では,PSO(粒子群最適化)法の適用が好結果をもたらすことを明らかにした.このPSOを効率的に適用するためには,適切な通信距離関数を導入することが重要であることを明らかにした.本研究では,仮想的なモデルを用いて数値シミュレーションを行い,基地局最適配置のためのアルゴリズムを開発した. これらの研究結果に対して,2編の査読付き論文,17編の査読付き国際会議プロシーディング及び5編の研究会技術報告を公表した.
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