Research Abstract |
現地観測については,2009年6月9日に筑後川ROFI(淡水影響域)の評価に関するラグランジュ的観測を実施した.漂流ブイに小型メモリー式塩分水温計を登載して筑後川河口付近の海域から放流し,GPSにより測位情報を自動的に記録し,移動経路とラグランジュ流を測定した.また,塩分・水温計の記録より追跡する水塊の同一性も確認した.これにより,筑後川から海域に流入し拡がっていく淡水塊のラグランジュ流を測定できた.また,観測船で漂流ブイを追尾しながら,ADCPを用いた曳航観測による全層の流速分布観測を実施した.さらに,別の観測船により一定時間毎に多項目水質計を用いて水温,塩分,濁度などの鉛直分布をした.これらにより,淡水塊が影響を受けるオイラー的な潮流場の構造と,その結果として生じる密度(塩分・水温)成層構造の変化を測定できた.加えて,鉛直混合過程の観測として,乱流微細構造観測プロファイラーによる鉛直方向の乱流エネルギー散逸率の鉛直分布測定を1時間毎に行った.これにより,鉛直乱流拡散係数の鉛直分布の時間変化を直接測定できた.これらの観測結果は,数値シミュレーションの精度検証や,モデルパラメータのチューニングに使用できると期待される. 次に,数値シミュレーションについては,3次元の静水圧近似流動モデルに,鉛直σ座標系,Sub-Gridモデル,k-ε乱流モデル,干潟モデル,粘着性/非粘着性土砂輸送モデルを組み合わせたモデルを使用して,潮流・微細土砂輸送シミュレーションを行った.その結果,有明海では非線形潮汐が強く,月の昇降点運動に起因する起潮力変化の影響を受けて,微細な底質の輸送構造が変化することが明らかとなった.
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