2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21560670
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Research Institution | Ashikaga Institute of Technology |
Principal Investigator |
渡邉 美樹 足利工業大学, 工学部, 准教授 (90326819)
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Keywords | 寺院領地 / 寺社領上地 / 寺社領処分 / 墓地政策 / 谷中 / 西浅草 / 寺町 / キリシタン墓地 |
Research Abstract |
23年度は、東京23区内の寺地変遷のデータ(平成22年度作成)をもとに、とくに詳細に調査・分析を行う地区として、寺院数が維持されており、寺院領地の減少が比較的少ない、台東区谷中地区を選定した。谷中地区については、江戸以前からの4寺と、寛永寺を核として、18世紀半ばに寺町が完成した経緯や領地、宗派、江戸期の朱印地、古跡拝領地、拝領地、借地の別を検証した。とくに玉林寺については、異宗の寺院に領地を貸していたことが解ったため、その経緯を日本建築学会大会(関東)発表論文としてまとめた。寺院領地の変遷をみる上で、明治維新後の上地と地租改正による地籍の移動経緯を詳細に理解する必要が生じたため、江戸期の寺院領地が、昭和期までにたどった地籍の移動、諸法律について、文献資料による調査を行った。同時に、寺院墓地に関する諸政策、政策による動きを理解する必要があり、文献資料による調査を行った。主として、平成22年度に行った現地調査および、文献資料によって収集したデータをまとめ、寺院リストおよび寺院領地変遷の図を複数枚作製し、分析と考察の結果および得られた知見を、日本建築学会計画系論文集「台東区谷中地区の寺地の変遷-寺院墓地に着目して-」としてまとめた。分析の対象を谷中地区に絞ったことにより、谷中地区特有の寺院領地変遷の経緯が読み取れたことは、意義深い。また、寺院領地の定義について、これまであいまいだった点を再定義し、上地から寺社領処分までの諸政策や寺地所有の形態を歴史的事実に基づき明確化することができた。さらに、墓地政策と寺院領地に関する諸政策を並行して分析することにより、寺院領地の変遷の流れがより、明確となった。「谷中地区特有の寺院領地変遷の経緯」について得られた知見とは、おもに3つである。一つは、墓地を伴う庶民信仰の寺が多く、都心部からは離れた郊外にあったため、上地以降も寺院が移転せず、寺地が確保されたこと、二つ目は、玉林寺、天王寺、寛永寺の借地だった寺院は、上地以後土地の権利を取得している。これは、寺地の既得権によるものと思われる。三つ目は、寺地(墓地)が神葬祭推奨以後も、官有地墓地(共葬墓地)として確保され、公共用地としての運用を免れたため(寛永寺、天王寺以外)、寺社領処分ののちに寺院に返還され、最終的には寺地として維持された箇所が多いことである。 23年度後半は、分析対象を西浅草とし、資料分析を進めた。西浅草は、上地以後、移転した寺院が大変多いこと、震災復興による区画整理を受けており、寺地そのものにも変化があることなどから、谷中地区とは大きく異なる知見が得られると思われる。23年度は、天草、平戸のキリシタン墓地、弘前、岐阜寺町の現地調査も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
23区内の実地調査および資料収集はほぼ終了しており、今後特徴的な地区について詳細にまとめることにより、23区内の寺地変遷の全体的把握が可能だと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、詳細に調査を行う複数個所について、変遷地図と寺院リストのデータ化を速やかに行う。23区内の寺院変遷の全体的把握を進めながら、地方都市(寺地)についての現地調査を行い、比較検討を行う。
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