2011 Fiscal Year Annual Research Report
応用展開のためのカーボンナノチューブ-アルミナ複合材料の研究
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21560709
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大森 守 東北大学, 大学院・工学研究科, 技術補佐員 (30005954)
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Keywords | カーボンナノチューブ / 複合材料 / アルミナ / 水酸化アルミニウム / 放電プラズマ焼結 |
Research Abstract |
凝集しやすい多層カーボンナノチューブ(MWNT)と、アルミナとから複合材料を製造することに関し、これまでに成功例は存在しなかった。高分子系の複合材料では、高分子を融点直上に加熱した高粘度下での混合が可能で、この状態では混合或いは成型工程でせん断応力を作用させ、カーボンナノチューブの凝集を解いて一本ずつ分散できる。しかし、アルミナ粉体と水とから作られるスラリーを高粘度にするのは不可能で、MWNTを一本ずつ分散するのが困難であった。本研究では、MWNTをその直径が太くグラフェン層の厚い肉厚(直径30nm~90nm)と、直径が小さくグラフェン層の薄い肉薄(直径30nm以下)とに分類して使用した。肉厚MWNTは剛性が大きく凝集しにくく分散が容易であった。肉厚MWNTには熱処理温度の異なるものが販売されており、1200℃と2600℃の製品を使用した。肉薄MWNTは凝集力が強く解膠はできなかったが、凝集体の塊が小さければ、複合材料の強度を極端に低下させないので、肉薄MWNTのうち凝集体の大きさが5μm以下の原料を選択して使用した。もう一つの原料であるアルミナには水酸化アルミニウムを使用しナノ混合できるようにした。この結果、MWNTの異なる3種類の複合材料を製造できたが、どれについても曲げ強度は400MPa同等或いはそれ以上であり、靭性値はアルミナのそれより大きく工業材料として使用できる機械的性質を満足することができ、当初の目標を達成することができた。この複合材料の表面に黒鉛粉を擦り付けると、表面に露出したMWNTとファンデルワールス力によって黒鉛膜が形成される。この膜の厚さは2~3μmであり、黒鉛の低摩擦係数を持つ複合材料になる。これを応用した製品としては自己潤滑性の軸受や、人工股関節の磨耗しないカップが製造できる。電気伝導度を広範囲に変化させた複合材料の製造も可能であり、静電気によるごみの付着が問題視される部品に使用できる。さらには、複合材料は電磁波をよく吸収できるので、電磁波吸収材料やアンテナに適用できる。この複合材料を製品に応用してくれる会社を求めている。
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Research Products
(10 results)