2010 Fiscal Year Annual Research Report
アセンブリー・ルールによる植物群集の予測:ニホンジカによる被食下の極相植生
Project/Area Number |
21570017
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
小池 文人 横浜国立大学, 環境情報研究院, 教授 (20202054)
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Keywords | ニホンジカ / 食害 / 将来予測 / 指標植物 / 嗜好性 / 屋久島 / 北海道 |
Research Abstract |
平成23年度は屋久島で被食圧の調査を行い北海道でも食害調査を開始した.屋久島の調査では全島において山際における被食圧の定量化を行った.2011年2月に集落のいちばん奥の畑や車道脇の林でシカ柵がないところを選び,島内に14地点を設定した.2009年に嗜好性値を決定した種群(2010年度学会口頭発表)を指標種として,食痕の有無を15分間探索した.シカが食べるとこができる地上20-100cmにある植物のみを調査し,急斜面などは避けた,解析では指標植物の被食の有無を目的変数とし,指標植物の嗜好性値を説明変数とした.ロジスティック関数の傾きは2010年の解析での値に固定し,切片だけを最尤推定して調査地点の値を得た. 屋久島全体は被食圧によって4地域に分けることができた.南部の安房から栗生までは,シカの被食圧がとても低い地域であり,全く被食が見られない地点もあった.このレベルの被食圧であれば,一部にツルラン類などの欠落種がでるが健全な森林が保たれると考えられた.永田から一湊にかけての北西部は次に被食圧が弱く,将来的に森林は維持されるがシイ・カシ・イスが欠落しはじめると考えられた.宮ノ浦から小瀬田にかけての北東部はかなりの被食圧があり,森林の再生はかろうじて可能だが,ヤブコウジ科,ツバキ科も欠落しはじめると考えられた.大川から永田岬までの西部林道では極めて被食圧が高く,将来は森林が消失しクワズイモ,ハスノハカズラなどの草地となる可能性がある.この方法は指定した指標種の食痕を調べるだけであるので調査が簡単で,異なった年の状態も定量的に比較できる.
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