Research Abstract |
平成23年度は,屋久島において被食圧,および極相植生での優占度を決める種特性についての野外調査を完了した. 解析方法の開発においては,これまで植物種の一対比較をもとに固有ベクトルを使用して嗜好性値を求めていたが,2種間の差を標準ロジスティック関数の横軸の平行移動として考え,当該種の植物の被食状況(被食個体数,調査個体数)の尤度曲線を構成し,これを使って種間の差の尤度関数を求めた. 従来の計算方法と比較して,(1)データ数が少ない種での「1個体調べて被食無し」などのデータも有効利用できる,(2)嗜好性値の誤差の大きさ(信頼性)を評価できる,嗜好性値の尺度を固定できる(嗜好性値が1.0違うときの意味を統一),などのメリットがある. 従来の方法と比較した信頼性を調べるため,新しい手法での最尤地としての嗜好性値と,従来の手法との相関係数は極めて高かった.新しい手法により屋久島の植物94種についてシカによる嗜好性を定量化したところ,被食されやすい上位20種は,ガンセキラン,ゼンマイ,オオムラサキシキブ,ハドノキ,エゴノキ,イヌビワ,シロダモ,ツルラン類,キノボリシダ,ヘゴ,シロヤマシダ類,ルリミノキ,リュウキュウルリミノキ,ホングウシダ,ダンチク,アオノクマタケラン,ヤブニッケイ,マルバルリミノキ,チガヤ,ブドウ類である.逆に被食されにくい下位20種は,イシカグマ,クワズイモ,ワラビ,ハスノハカズラ,アブラギリ,ウドカズラ,テンナンショウ類,ユノミネシダ,センリョウ,アリドオシ,ベニバナボロギク,スギ,マンリョウ,クロキ,ミミズバイ,コシダ,ホソバカナワラビ,カツモウイノデ,カンコノキ,ホウロクイチゴであった.
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