Research Abstract |
葉の無い季節(非展葉期)の植物は,地下器官を含めた個体全体が休眠状態にあるとみなされがちである。しかし,冬緑性草本であるヒガンバナ(関東地方における展葉期間は10月から翌年5月の約8ヶ月)では,非展葉期である夏季に新根が出現し,窒素を吸収することが明らかになっている。本研究は,非展葉期における窒素の吸収量を,展葉期との比較から定量的に把握すること,および,この時期の窒素吸収が展葉期のパフォーマンス(フェノロジー・光合成特性・成長)に与える効果を,展葉期における窒素吸収の効果との比較から評価することを目的とする。 平成23年度は,21年度および22年度に行った栽培実験のサンプルの処理(主に植物体窒素の定量)とデータ解析を行った。栽培実験では,施肥時期の異なる条件下でヒガンバナを栽培し,展葉期のパフォーマンスを比較した。また植物体の窒素量を測定することにより,それぞれの時期の窒素の吸収量を推定した。実験から,ヒガンバナは非展葉期にも,展葉期にも窒素を吸収することが明らかになった。しかし,それぞれの時期の吸収が展葉期のパフォーマンスに与える効果は異なっていた。非展葉期(6月,7月)の吸収は,展葉期の成長を促進した。展葉初期(10月,11月)の吸収は,葉の窒素濃度や光合成速度を高めたが,成長に対する効果はなかった。展葉中期(1月,2月)の吸収は,光合成速度にも成長にも効果をもたなかった。各時期における窒素の吸収量を比較すると,22年度の実験では,大きい順に,非展葉期,展葉初期,展葉中期であったが,21年度の実験では非展葉期に比べて,展葉初期の吸収量が大きかった。現時点では季節ごとの窒素吸収量の定量的な比較については結論を出すことができない。
|