2011 Fiscal Year Annual Research Report
オオバギ(トウダイグサ科)と花序で繁殖するヒメハナカメムシの送粉共生の起源
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21570028
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Research Institution | Research Institute for Humanity and Nature |
Principal Investigator |
酒井 章子 総合地球環境学研究所, 研究部, 准教授 (30361306)
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Keywords | トウダイグサ科 / オオバギ属 / 送粉 / 植物繁殖生態 / カメムシ / アザミウマ |
Research Abstract |
H23年度は、以下の4点に主に取り組んだ。 1.オオバギ属における送粉者と防衛アリの相互作用 おもにマレーシア・サラワク州ランビル国立公園で、送粉者と防衛アリの相互作用について観察を行った。その結果、種にもよるが、アリの密度の高いアリ植物種については、花芽や未成熟果実の防衛のために積極的にアリを誘引するメカニズムが存在することを明らかにした。しかし、開花期間中は、アリを誘引している報酬が分泌されず、アリの密度は著しく低かった。アリと送粉者のコンフリクトはほとんど観察されなかった。この結果は、論文としてまとめ、国際誌に投稿することができた。 2.近縁属アカメガシワ属2種の送粉生態 オオバギ属における送粉者の進化を考える上で、近縁種がどのような送粉様式をもっているのかを明らかにした。これまでに、アカメガシワ2種について送粉システムの調査を行った結果、風媒と虫媒をあわせもった送粉システムを持つことが明らかになった。ほぼ投稿論文としてまとめおわり、近日投稿予定である。 3.オオバギ属の送粉システムの多様性の検討 標本庫の標本や文献情報をもとに、属内の種を送粉システムに関連の深い携帯形質に基づいて分類した。今後、送粉システムの確認および系統樹に基づいた分析をおこなうためのデータを得た。 4.オオバギへのカメムシの誘引メカニズムの検討 オオバギへのカメムシの訪花について、カメムシ自身のにおいが関与している可能性を検討するための予備実験を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
オオバギ属、アカメガシワ属について、送粉システムの同定を順調に進めている。送粉者であるクダアザミウマが、アリ忌避物質を分泌しているという興味深い仮説も得た。一方で、カメムシの誘引メカニズムについては、計画していた実験が、カメムシの行動を実験室下で再現することが困難なためにうまくいっておらず、さらに方法の検討が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
送粉サービス及び花資源の需供バランスとネットワーク構造の関係について、理論生態学者の協力を得られたので、モデルを構築し、理論的に検討する。ショウガ科については、解析を終えた論文として投稿した。できるだけ早い受理を目指す。トウダイグサ科について、送粉者の調査、植物、送粉者双方の系統関係の分析をすすめる。送粉者を共有するメリットについて、送粉者を共同で誘引する効果がいわれているが、それに加えて、送粉者の移動を促す効果があるという仮説を得た。これについても、理論的に検討したい。
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Research Products
(2 results)