2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21570075
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
本川 達雄 東京工業大学, 生命理工学研究科, 教授 (80092352)
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Project Period (FY) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | キャッチ結合組織 / 棘皮動物 / ナマコ / 硬さ |
Research Abstract |
キャッチ結合組織は、神経の支配の下に、その硬さを秒の単位で可逆的に変えることのできる、コラーゲン性の結合組織で、棘皮動物特有のものである。以下の様々な面から研究を行い、結合組織による硬さ可変現象の全体像を構築することを目的としたが、とくに硬さ可変の分子機構に関して大きな成果が得られた。 硬さは、軟らかい状態(S)、標準状態(M)、硬い状態(H)の3状態をとることがわかっている。状態の変化には異なるタンパク質が関わっているらしいのだが、詳細は不明だった。特に軟らかくなる反応に関わるタンパク因子については、まったく分かっていなかったが、本年度、これの実体が見えてきた。 ◎シカクナマコの体壁真皮軟化因子の精製:体壁真皮の軟化に関わるタンパク質の精製を進めた。この際、神経伝達物質等、神経系を介して硬さを変える物質を排除し、細胞外成分に直接効果をもつ因子のみを追い求めるために、界面活性剤Titon-X100で細胞を破壊した真皮を用いて力学試験を行った。シカクナマコ真皮を強く揉むことによって極端に軟らかくどろどろになったものを5MNaCl,20mMTris-HCl(pH8.0)中で抽出し、それを遠心して上澄みを透析し、ビバスピンを通してからMonoQカラムによる陰イオン交換クロマトグラフィー、次いでSuperose 12の2連結およびSuperdex peptideによるゲルろ過クロマトグラフィーにかけたところ、真皮Triton modelを軟らかくする効果をもつ因子が、ほぼ単一のピークになった。これは電気泳動によってもシングルバンドであった(現在、このバンドを切り出し、アミノ酸解析にかけているところである)。この軟化因子はtensilin(S→Mを起こす硬化因子)の効果をキャンセルするが、H→Mは引き起こさないため、M→Sの軟化反応に関わる軟化因子であると結論した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最大の懸案だった軟化因子の単離に、ほぼ成功し、アミノ酸配列決定の目途がたったため、おおむね順調に進展していると判断した。 分子機構以外では、ウニの棘のキャッチアパレータスを用いた神経支配の研究が進んでおり、キャッチ結合組織が放射神経経由の反射により軟らかくなるという、キャッチ結合組織に神経支配があるという直接証拠が得られつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度が本研究の最終年度であり、かつ、迂生の定年の年なので、実験生物学者としての人生の最後となる。キャッチ結合組織の研究は、迂生とイギリスのウィルキーとの二人が行ってきており、ウィルキーももうすぐ引退。後継者はどちらにもいない。ということで、キャッチ結合組織の研究は、ここでしばらくは打ち止めになる可能性が高い。将来またこの分野の研究をはじめる人たちのために、切りの良いところまで仕事を進めておきたいと、本「硬さ可変結合組織研究の総括」を行ってきた。最大の懸案だった、キャッチ結合組織の分子機構について、硬くするタンパク2種、そして本年度の発見による軟らかくするタンパク1種がみつかり、次年度は、この軟化因子の実体を明らかにできれば、当初の目的は達せられたと思う。
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Research Products
(7 results)