2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21580073
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
中原 治 Hokkaido University, 大学院・農学研究院, 准教授 (10253519)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渋谷 正人 北海道大学, 大学院・農学研究院, 准教授 (10226194)
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Keywords | 養分循環 / 養分制限 / 温帯林 / 地球温暖化 / 有機物分解 / 無機化 / 二酸化炭素 / 窒素飽和 |
Research Abstract |
1.in-growth core法を用いて、調査地内26地点の養分制限を決定した。その結果、N制限が13地点、P制限が3地点、NとPの共制限が10地点となった。生葉N:P比の閾値は、N制限がN:P比16以下、P制限がN:P比18以上であった。温帯林は本来N制限であると考えられており、一部の高窒素沈着量の窒素飽和した森林においてのみ、P制限が観測されている状況であった。本調査地の窒素沈着量は6kg/ha/yで窒素飽和するには低過ぎる値である。そこで、窒素降下物とは関係なしにP制限が起きていたと考えることができる。本研究の結果は、N制限からP制限に変化することが予想される温帯林の将来変化を予測する上でこの上ない絶好な調査地を得たことを意味する。 2.O層(有機質土壌)を用いた室内培養により、N制限の林分では0.1~1kg/haの窒素添加でCO2放出速度が促進され、1~10kg/ha以上の窒素添加で抑制される事が分かった。一方、P制限の林分では0.1kg/ha以上の窒素添加で常にCO2放出速度が抑制される事が分かった。以上の結果は、植生の成長の養分制限の変化が、窒素が有機物分解に与える影響を変化させる事を示している。本調査地のようなケースでは、窒素降下物はN制限のうちは大気のCO2濃度を高める働きを示すが、やがて、窒素飽和によってP制限に変化した後には、窒素降下物は大気のCO2濃度を低下させることになる。こうした結果は、温帯林の広域機能の将来変化を予測する上で、きわめて貴重な知見である。
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