2009 Fiscal Year Annual Research Report
植物におけるトリプトファン代謝の機能解明を志向した新規阻害剤の開発と利用
Project/Area Number |
21580126
|
Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
石原 亨 Tottori University, 農学部, 准教授 (80281103)
|
Keywords | トリプトファンデカルボキシラーゼ / 自殺基質 / 阻害剤 / 二次代謝 / セロトニン / イネ / イネごま葉枯病菌 |
Research Abstract |
イネは病原菌の感染に応答してセロトニンやそのヒドロキシ桂皮酸アミドなどのトリプトファンに由来する二次代謝産物を蓄積する。これまでの研究から、これらの化合物は細胞壁の強化による物理的防御に関与することが示唆されてきた。セロトニンは、トリプトファンから、トリプトファンデカルボキシラーゼ(TDC)によって生成するトリプタミンを経て生合成される。今年度は,TDCの阻害剤として機能すると考えられる(S)-α-(フルオロメチル)トリプトファン(S-αFMT)の合成法を確立し,TDCの阻害がイネの防御応答に及ぼす影響について調べた。 まず、S-αFMTを立体特異的にL-トリプトファンから合成し、この化合物のTDC活性に及ぼす効果を調べた。S-αFMTはイネの葉から抽出したTDC活性を効果的に阻害し、またその阻害率はインキュベーション時間を長くすることによって増加した。したがって、S-αFMTはTDCの自殺基質として働くことが分かった。次に、S-αFMTで処理したイネの実生にイネごま葉枯病菌の胞子を接種し効果を調べた。S-αFMTは、濃度依存的にトリプタミンやセロトニン、セロトニンのヒドロキシ桂皮酸アミドのなどの化合物の蓄積を阻害した。また、S-αFMTを処理した実生に形成された病斑は、細胞壁における褐色の物質の蓄積を欠いていた。S-αFMTを処理した実生は、コントロールと比較して感染により大きなダメージを受けることも分かった。さらに、このようなS-αFMTの効果は、いずれもトリプタミンの投与によって打ち消された。以上の結果から、トリプトファンに由来する二次代謝の活性化はイネの防御応答の一部であることが支持された。
|