2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21580377
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
堀井 洋一郎 University of Miyazaki, 農学部, 教授 (80173623)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野中 成晃 宮崎大学, 農学部, 准教授 (50281853)
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Keywords | 肺吸虫 / ウェステルマン肺吸虫 / 血清疫学調査 / イノシシ / イノシシ猟犬 |
Research Abstract |
肺吸虫症は人獣共通感染症であり、ヒトやイヌ、ネコにおいて発熱、発咳、血痰などの症状を呈し、重度感染では死に至ることもある。2002~2005年に、九州全域のイノシシ猟犬224頭について、肺吸虫特異抗体を検査した結果、147頭(65.6%)が陽性を示した。研究初年度は当初計画では九州内のイノシシ猟犬の肺吸虫感染状況を血清疫学的に再調査する予定であったが、有力な協力者が出現し、中国地方、四国地方の猟友会との交渉により、猟犬の採血調査の協力を取り付けてもらったため、急遽予定を変更して中四国地方のイノシシ猟犬の肺吸虫感染状況を調査した。中国地方では、山口県、広島県、岡山県、鳥取県、島根県の5県で合計133頭の採血を行った。ウェステルマン肺吸虫虫体抽出液を抗原としてELISAを行ったところ、133頭中の63頭(47.4%)が抗体陽性と判定された。四国地方では、高知県、徳島県、香川県の3県で合計105頭の採血を行った。これらの血清を同方法により検査した結果、四国地方では105頭中の55頭(57.2%)が陽性を示した。また、聞き取り調査によるイノシシ肉生食歴の有無で感染率の比較を行ったところ、イノシシ肉生食歴のある猟犬では陽性率57.0%、非生食群では陽性率19.0%で有意の差(χ^2 : P<0.01)が認められた。一部の猟犬の糞便から回収された虫卵の形態からはウェステルマン肺吸虫の可能性が高かった。今後、遺伝子診断にて確定する予定である。以上の結果から、九州のみならず、中国、四国地方を含む西日本の大部分で、ウェステルマン肺吸虫が分布しており、イノシシは待機宿主として、猟犬は終宿主として、この寄生虫の感染環の維持に重要な役割を果たしていることが強く示唆された。また、聞き取り調査で猟師の間でもイノシシ肉の生食習慣が見られたことから、ヒトの肺吸虫症の発生の可能性も大きいものと推測される。
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