2010 Fiscal Year Annual Research Report
亜鉛による虚血性神経細胞死におけるカルシウムと小胞体ストレスの関与
Project/Area Number |
21590145
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Research Institution | Kyushu University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
川原 正博 九州保健福祉大学, 薬学部, 教授 (40224828)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
定金 豊 九州保健福祉大学, 薬学部, 准教授 (60293304)
小山 裕也 九州保健福祉大学, 薬学部, 助手 (70567718)
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Keywords | カルシウム / 亜鉛 / 小胞体ストレス / アポトーシス / アルツハイマー病 / プリオン病 / 脳血管性認知症 / イメージング |
Research Abstract |
老齢人口の増大に伴い、老年性認知症患者数は増加の一途をたどっており、2030年には350万人を越えると推定されている。この老年性認知症の約3分の1を占める脳血管性認知症は、脳虚血後に海馬・大脳皮質などで生じる遅延性神経細胞死が原因と考えられており、脳内の亜鉛が重要な働きを持つことが判明している。従って、亜鉛による神経細胞死のメカニズムを明らかにし、これを抑制することによって、脳虚血後の遅延性神経細胞死を抑制し、最終的には脳血管性認知症を予防・治療することが可能となり得る。 申請者等はこれまでに亜鉛による神経細胞死メカニズムについて検討した結果、亜鉛結合能を持つメタロチオネイン、亜鉛トランスポーターZnT-1、記憶・学習に重要な働きを持ち、Ca^<2+>流入によって発現が促進されるArc、小胞体ストレス関連遺伝子であるGADD38、p8、PERK、CHOPなど数十種の遺伝子発現が増加あるいは減少していることを見出している。さらに、亜鉛による神経細胞死を抑制することが判明しているピルビン酸、カルノシン、ヒスチジンはこれらの小胞体ストレス関連遺伝子発現を抑制することも明らかになっている。また、派生的な結果から亜鉛による神経細胞死を抑制するカルノシンは、プリオン病の発症に重要な役割を果たすプリオン蛋白の神経毒性とβシート構造変化を抑制することが明らかになった。 これらの結果から、脳血管性認知症並びにプリオン病の発症メカニズムにおける微量金属の関与が明らかになり、予防・治療物質探索への可能性が開ける結果となった。
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