2011 Fiscal Year Annual Research Report
慢性ストレスとうつ病:香料吸入の予防効果とその機序に関する研究
Project/Area Number |
21590255
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
渡邊 達生 鳥取大学, 医学部, 教授 (60182929)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 信介 鳥取大学, 医学部, 准教授 (60194817)
三好 美智夫 鳥取大学, 医学部, 助教 (20093627)
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Keywords | うつ病 / 前頭前皮質 / 海馬 / 神経新生 / doublecortin / c-fos / Zif268 / 酪酸 |
Research Abstract |
平成22年度の本研究では、強制水泳試験や学習性無力試験を負荷したラット(うつ病モデル動物)に緑の香りを吸入させると、それぞれ無動時間やfailureが減少することが分かった。すなわち、緑の香りには、抗うつ作用がある。一方、うつ病患者では前頭前皮質の活動が低下することや海馬の委縮が起こることが報告されている。前頭前皮質や海馬に起こる病変の改善とうつ病治療との関わりが注目されており、今回、緑の香りによる抗うつ効果の作用機序としてこれらの脳部位に着目した。リアルタイムRT-PCRでmedial prefrontal cortex (mPFC)のIEGs遺伝子(c-Fos;神経活動の指標、Zif268;神経可塑性の指標)の発現解析を行い、海馬では神経新生のマーカーであるdoublecortin (DCX)に対する抗体を用いて免疫組織化学染色を行った。その結果、コントロール群、うつ病発症後にvehicleを提示した群とうつ病発症後に緑の香りを吸入させた群を比較すると、IEGsの発現や海馬の神経新生に有意差は認められなかった。すなわち、緑の香りの抗うつ作用に神経薪生と前頭前皮質ニューロンの活動は重要な役割を果たしていないことが分かった。 一方、香りによる抗うつ効果が香りの種類特異的なものであるかを検討するため、強制水泳試験を行ったラットに酪酸を吸入させたところ、酪酸では抗うつ作用は観察されなかった。すなわち、強制水泳試験における抗うつ効果は香りの種類特異的なものであると考えられる。 緑の香りの作用機序として、前頭前皮質や海馬の関与の有無についてのさらなる検討が必要であり、今後は扁桃体など脳の他の部位も研究対象に含めて検討を行う必要がある。
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Research Products
(6 results)