Research Abstract |
【目的】哺乳類の雌雄はY染色体上の精巣決定遺伝子Sryによって決定される.しかしながら,Sryは正常でも,組織中に45, X(ターナー核型)細胞が混在する(モザイク)ことで正常な性分化が損なわれる症例が存在する. 【材料と方法】患者(18歳.染色体45, X/46, XY.表現型女性)より供与された血液細胞,左右性腺および左右腹膜組織を用いて免疫組織化学的および細胞分子遺伝学的解析を行った. 【結果】血液細胞では46, XY核型の比率が高かったが,他組織ではいずれも45, Xの比率が高く,組織によっても異なっていた.免疫染色では,SRYは左中腎管にわずかに発現し,SOX9は左右の卵管采,卵管および中腎管上皮細胞の核に強発現がみられた.FOXL2は左右の中腎管上皮細胞の核および細胞質に瀰漫性に発現が認められ,右卵管でも発現が認められた.また,性分化関連遺伝子であるGATA4, AR, WNT4, WT1, FGF9およびSOX9の発現に明らかな左右差がみられ,GATA4, ARおよびSOX9は左性腺で強発現,FGF9は右性腺でのみ強発現し,精巣分化に関連する遺伝子であっても発現の有無に左右差がみられた.また,卵巣分化に関連するWNT4も左性腺に強発現していた. 【考察および結論】本患者の遺伝子発現には組織差および左右差が存在することが明らかになった.ターナー核型モザイク患者では組織によりモザイクの割合や,遺伝子発現が大きく変化することが明らかとなり,それが多様な性分化異常を引き起こす要因であることが示唆された.性分化異常の解析では血液のみならず,性腺や胚葉の異なる組織における検索の重要性が示された.性腺の性分化破綻機構には組織差,左右差があることが明らかになった.
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